9月19日に『Beyond Shadowgate』(Zojoi)がPC(Steam / GOG)にて発売される。
これは1989年にケムコから発売されたファミコン(NES)用アドベンチャーゲーム『シャドウゲイト(Shadowgate)』*1の正統続編だ。Kickstarterで開発支援を募ったところ、目標金額$25,000のところ最終的には$120,000以上もの支援を集めて大成功。このたびついに発売の運びとなった。
この新たな作品のリリースを前に、これまでのシリーズの歩みを振り返ってみよう。
- 開発会社ICOM Simulations
- TurboGrafx-CD版『Beyond Shadowgate』
- その後のシリーズの展開
- ICOM Simulationsの元スタッフがZojoi設立
- そしてファミコン版正統続編の『Beyond Shadowgate』へ
開発会社ICOM Simulations
『Shadowgate』のオリジナルは、1987年にアメリカのICOM SimulationsからMacintosh向けに発売された。ICOM Simulationsは当時MacVentureというシリーズを展開しており、『Shadowgate』もそのひとつだった。MacVentureシリーズは好評を受けて他の機種にも移植され、日本でもすべてプレイすることが可能だった。
また一連の作品はアメリカにおいて、アドベンチャーゲームのスタンダードである「ポイント&クリック形式」の普及に貢献したという点でも重要視されている。
原題 | 発売年 | 邦題 | 日本発売年 |
---|---|---|---|
Déjà Vu: A Nightmare Comes True!! |
1985年 | ディジャブ | 1988年 |
Uninvited | 1986年 | 悪魔の招待状 | 1989年 |
Shadowgate | 1987年 | シャドウゲイト | 1989年 |
Déjà Vu Ⅱ: Lost in Las Vegas |
1988年 | ディジャブⅡ | 1999年*2 |
ICOM Simulationsが他にリリースしたアドベンチャーゲームには『Sherlock Holmes: Consulting Detective』(1991年)がある。当時まだ珍しかった音声付き実写動画を取り込んだ意欲作だ。日本でも『シャーロック・ホームズの探偵講座』と題してFM TOWNS向けに発売され、間を置かずPCエンジンCD-ROM²でも発売された(第1作と第2作が移植され、第3作は日本未発売)。
名前には馴染みがないかもしれないが、ICOM Simulationsはこのように日本との繋がりが少なからずあった。中でも特に人気を博したのが『シャドウゲイト』だった。
魔王ワーロックを倒すために勇者が悪の城に乗り込み、死と隣り合わせの冒険を繰り広げる……という王道的ファンタジーなのだが、そのバリエーション豊かな死に様が、日本版ではきわめてユニークな翻訳によって描写され、プレイヤーたちの胸に強く刻み込まれた。それがいかに画期的な仕事であったかは下記の記事に詳しいので、ぜひ一読されたい。
TurboGrafx-CD版『Beyond Shadowgate』
1993年、続編である『Beyond Shadowgate』がTurboGrafx-CD(PCエンジンCD-ROM²の海外版)で発売された。しかし前作とはまったく違うゲームデザインになっていた。
この件については、私のポストに今作の『Beyond Shadowgate』スタッフアカウントから返信があった。諸事情あり、オリジナルスタッフの意図とはかけ離れた出来になってしまったという。
そのため、「Turbografx」のバージョンは私たちのゲームとは何の関係もありません。どちらのゲームも同じ設計ドキュメントから構築されましたが、TGFX チームは作成者のアイデアから大きく逸脱していました。
— Shinigami (@Chrisaegrim) September 4, 2024
その後のシリーズの展開
ICOM Simulationsは紆余曲折を経て1997年に事業を停止し、作品の権利はInfinite Ventures社が保有することになる。
1999年、ゲームボーイカラー向けに『Shadowgate Classic』(邦題:シャドウゲイト リターン)が、NINTENDO64向けに『Shadowgate 64』が発売された。前者はファミコン版にとても忠実な移植で、いつでもどこでも勇者の死に様を楽しむことができた。後者は3Dアドベンチャーになっており、当時のトレンドに沿って作製されたと言えるだろうか。
それからしばらく、シリーズに目立った動きはなかった。
ICOM Simulationsの元スタッフがZojoi設立
2012年、ICOM Simulationsの元スタッフであるデビッド・マーシュ(David Marsh)氏とカール・ロロフス(Karl Roelofs)氏が新しいゲーム会社Zojoiを設立する。
彼らはかつて手がけた作品の権利を取り戻し、まずは『Sherlock Holmes: Consulting Detective』のリマスター版でデビューした。
これによりZojoiをある程度軌道に乗せた彼らは2014年、いよいよ『Shadowgate』を再スタートさせる。ファミコン版を根底から作り直し、ディテール豊かな迷宮探索アドベンチャーに生まれ変わらせた。
さらに2021年には『Shadowgate VR: The Mines of Mythrok』を発表する。最初にOculus Quest向けにリリースされた後、2022年にSteamでもリリースされた。
そしてファミコン版正統続編の『Beyond Shadowgate』へ
2024年、多くの山と谷を乗り越えて、多くのファンの支援を受けて、新たな『Beyond Shadowgate』が世に送り出される。
今度はオリジナルスタッフの意図が完璧に反映された、TurboGrafx-CD版とは無関係な、ファミコン(NES)版の正統続編だ。そのゲームデザイン、アート、サウンド、すべてが往年のファンにはたまらないものとなっている。
あいにくと現段階では日本語に対応していないものの、売上が好調であれば……その先の展開を夢見てもいいかもしれない。応援したいという人は、まずはウィッシュリスト登録をしてみてはいかがだろうか。