イラストレーションとストーリーの複合的娯楽であるノベルゲームは、漫画とある意味では同じジャンルであり、親和性が高い。
自然と、漫画に近づけてみるという試みも生まれるようになった。まずはメッセージウィンドウの変形だ。
従来の形から少し変える、あるいは本格的な漫画風フキダシへの置き換え、これらが1980年代からすでに見られる。表示場所が一般的な画面下から画面上になっていることにも注目されたい。それまではあまりなかったことだが、この形式ならばしっくりくるのがわかる。
台詞が縦書きになれば、より漫画らしくなる。
『パンドラの夢』はVENUSystem(Visual Effective Novelty Unite System)――斬新な視覚的効果を合体させたシステムを導入した。多様なフキダシを使った縦書きテキストが特徴で、とりわけコメディシーンでのインパクトが増している。終始この漫画的表示ではなく、ある重要パートではクラシカルな横書きスタイルに切り替えるなど、演出面に細部まで工夫が凝らされた作品だ。
『白詰草話 -Episode of the Clovers-』はFFDシステム(FLOATING FRAME DIRECTOR SYSTEM)と銘打った。漫画のコマのような画像とフキダシが固定位置を持たず、流れるように浮かび上がりながら表示されるという、かつてないほどの斬新かつ華麗なシステムはその絵柄も相まって大きな注目を集めた。
ただしこのシステムは容易に想像されるように原画枚数が跳ね上がり、コストが高くなる。小規模インディーレベルのクリエイターでは真似するのは困難だろう。
漫画を描いていた人がノベルゲーム制作に挑戦するという例はしばしば見られる。これらの手法はそういったクリエイターにはマッチしているかもしれない。通常はオーソドックスな作りで、ここぞという時には漫画的表示にしてみるなど、部分的採用でもいいのだ。実現したい物語と自分の仕事量と、よく相談の上で検討してみよう。
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