アライコウのノベルゲーム研究所

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国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第20回『えりかとさとるの夢冒険』

『えりかとさとるの夢冒険』(ナムコ、FC、1988年)

発売元:ナムコ
初出:1988年

さんまの名探偵』以来となるナムコ発のアドベンチャーゲーム。開発はのちに『真・女神転生』や『ペルソナ』シリーズで有名になる、当時まだ新興企業だったアトラスが手がけている。
 双子の兄妹えりかとさとるが、本当の幸せを知ることができるという“ときのかんむり”を求めて不思議な世界を冒険する……これだけであれば特筆することもない、よくある年少者向けのファンタジーという評価に留まっていただろう。しかしそんな凡庸な作品ではなかった。アドベンチャーゲームとしては当時きわめて珍しい2人同時プレイを可能としていたのだ。

2人のプレイヤーが別々の行動を取れる

 ゲームがスタートすると、えりかとさとるの兄妹をマップ移動させていく。2人用プレイではそれぞれが独自に動くことができる。怪しいと思った部分はクローズアップして、そこにいるキャラクターと話したり気になった箇所を調べたりするが、この時もう1人はマップを自由に移動できるし、合流して共同調査することもできる(同時に別々の場所のクローズアップはできない)。途中には2人同時プレイのミニゲームも挿入される。
 一緒に遊んでくれる家族や友達が見つからない子供でも問題なくプレイできるように、1人用プレイも用意されている。セレクトボタンを押すと相方に切り替えられ、2人同時プレイのミニゲームはクイズに置き換えられるといった具合だ。

兄妹の冒険は一筋縄ではいかない

 ほとんどのキャラクターは擬人化された動物で、全体的にメルヘンチックな世界観だが、ストーリーは終始ほのぼのしているわけではなく、洞窟探索など緊迫感もある。相方がさらわれてしまい一時的に1人しか操作できなくなるシーンなどは、2人をストーリー上だけでなくプレイヤー間でも分断してしまい、独自のシステムを上手く活用している。
 アドベンチャーゲームの主人公はまったく無口なことも珍しくないが、えりかとさとるは活発にしゃべり、豊富なグラフィックで様々な姿を見せてくれる。当時同年代の子供たちは親近感を覚えながらプレイしただろう。そして長い冒険の果てに迎えるエンディングは、まさしく夢のように不思議な余韻を残してくれる。
 独自の拡張音源を採用したBGMも非常に良質。オープニング曲はファミコンアドベンチャーゲーム屈指の美しさで、夢冒険というタイトルにふさわしい。

 協力プレイはアクションゲームやシューティングゲームであれば珍しいものではなかったが、アドベンチャーゲームで実現したという先駆性はこのジャンルの歴史を語る上で外せないだろう。アクションアドベンチャー『It Takes Two』など、近年は2人協力専用のゲームも登場しているが、テキストアドベンチャーにおいてもまだまだ鉱脈がありそうだ。

© Bandai Namco Entertainment Inc.