コマンド入力型に取って代わる形で普及したコマンド選択型のアドベンチャーゲーム。画面に表示されているコマンドを適切な手順で選べば先に進めるというのが一般的な流れだ。
この形式もコマンド入力型ほどではないにせよ、全盛期の1980~90年代と比べればだいぶ減少しているが、根強いファンはいる。『ファミコン探偵倶楽部』シリーズのように基本的な形はそのままでフルリメイクや新作が発表される例があるし、『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』は新規IPながら日本ゲーム大賞2023の優秀賞に輝くなど評判となった。クラシックなスタイルそのものを売りにした『ミステリー案内』シリーズなどの例もある。今でも十分に訴求力のある形式と言えるだろう。
現在主流の選択肢型と比べてコマンド選択型ならではの要素、メリットは何か。それはプレイヤーの自由な「寄り道」によって面白さを出せることだ。
その場所毎に様々なコマンドを試せるし、同じコマンドを何度も繰り返すことさえできる。ここにお遊び要素を入れられるわけだ。ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』では、虫眼鏡で太陽を見ると相棒のヤスに怒られるという有名な場面がある。
別のジャンルで例えるとRPGの、街にいる人々の会話だろうか。それらはクリアに必要ではない、どうでもいい会話のことも多いが、こういった要素を通してプレイヤーの緊張感を和らげたり、キャラクター描写を深めることができる。
他の作品ではあまり見られないような特殊なコマンドを採用するのも手段のひとつ。『探偵 神宮寺三郎』シリーズの「タバコ吸う」コマンドはその最良の例だ。
シリーズの代名詞的なコマンドになっており、神宮寺のキャラクターをこれ以上なく引き立たせることに成功している。一服することによって何かが閃くこともあるが、特に何も起こらないことも多い。状況によっては吸うのを自ら控えようとするし、吸い過ぎをたしなめられたりする。必ずゲームの進行に役立つわけではないが、この塩梅がゲーム全体に余裕を生むための秘訣だ。ちなみにシリーズ第7作の『灯火が消えぬ間に』では、ゲーム中にタバコを4000本吸うと神宮寺が倒れてしまうという途方もないバッドエンドも存在した。これは極端な例だが、ほんのおまけを盛り込むのにもちょうどいいだろう。
単に一直線なストーリーを見せたいならば、コマンド選択型を採用する理由はほとんどなく、素直に選択肢型にしたほうが作りやすい。この令和の時代に、なぜコマンド選択型にするのか、これでどう遊ばせたいのか……事前にコンセプトを明確にしておこう。
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