アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

ノベルゲームの構造と演出 進行構造4「選択肢(多)」

 

 豊富な選択肢によって千変万化していくストーリー。これがノベルゲームというジャンルの売りのひとつとされている。場合によっては物語の展開どころかキャラクター設定そのものから変えてしまうことも可能だ。

『学校であった怖い話』(バンプレスト、SFC、1995年)

『学校であった怖い話』は学園の七不思議を題材としたホラーで、語り部たちが順々に怖い話を披露する。ひとつの話の中でも多彩な展開が用意されており、ストーリーの題材と大量の選択肢というゲームデザインが上手く噛み合っていた好例だ。それでいて一話一話はそう長くなく区切りがはっきり付けられているので、プレイヤーはさほどの負担を感じない。

パスティーシュ・ノベル 月屋形事件』(言ノ葉迷宮、PC、2006年)

 通常は画面いっぱいのテキストが表示されても特に何も思わないだろうが、選択肢となると少なからず圧迫感をもたらすことができる。選択肢はプレイヤーが能動的に選ばなければならないため、突きつけられる量が多ければそれだけ迷うことに繋がる。使い方次第ではいい演出にもなってくれるだろう。
 選択肢はその気になれば、ひとつのシーンにいくつでも設置することができる。一画面に表示しきれない数の選択肢でも、「次のページへ」といったリンクを設置して画面を分けてしまえばいいからだ。実際はそこまで大量の選択肢が必要なシーンというのはあまり考えられないので、おのずと限度があるだろうが。

Slay the Princess』(Black Tabby Games、PC、2023年)

 近年では海外発の『Slay the Princess』が大きな注目を浴びた。ループ系の作品で、1周はさほど長くないのだが、おおむね5~15クリックもすれば新たな選択肢が出てくる。分岐の数はとても数えきれず、プリンセスのキャラクターもプレイ毎にガラリと変わる。繰り返すたびに選択肢は増えていく。フルボイスなので容量も10GB以上と、ノベルゲームとしてはめったに見ない数字になっている。
 スクロールバーを用いることで羅列する選択肢をコンパクトに収めているのが上手いところ。どんな長文の選択肢でも好きなだけ表示できる。こんなやり方があったか、と私も膝を打ったものだ。
 なお、設定そのものが変わってしまう作風は、たとえば恋愛要素の強い作品とは相性が悪い。キャラクターが一貫していなければ王道ラブストーリーを楽しんでもらうことは困難だろう。

 当然の話になるのだが、選択肢は多ければ多いほど、作り手にとってはコストが増していく。同時に不具合を起こしてしまうリスクも増える。選択肢が多いノベルゲームを作りたいなら、常にこの点は頭に入れておきたい。

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