アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

ノベルゲームの構造と演出 進行構造5「選択肢(少)」

 

 選択肢を少なくしたノベルゲーム、これにもいろいろなパターンが考えられる。
 恋愛ものであれば、攻略対象を選ぶだけの選択肢(おおむね3、4人)がひとつだけあり、あとはそのまま分岐することなく個別エンディングまで一直線という例がある。恋愛ものの一番簡単な形になるだろう。
 二択の選択肢がたったひとつあり、一方はバッドエンドという方法もある。そのバッドエンドの内容によっては正統エンディング以上に強い印象を残せるはずだ。

 私がこれまでにプレイしてきた中で印象的なのは、2つの同人ゲームである。

灰瞳に機す』(お茶みどり、PC、2008年)

貴方に託す選択肢は、一つだけ。
たったヒトツの分かれ道の、物語。

 殉愛ビジュアルノベルと銘打った『灰瞳に機す』。作中に登場する選択肢はたったひとつ、白か黒か。ネタバレになるため具体的な言及は避けるが、その愛にいかに殉じるかという選択を突きつけられた少年のあまりに悲壮な物語だ。ともあれこのように選択肢がひとつしかないこと自体をアピールポイントにする手法もある。

灰瞳に機す(DLsite.com)

親愛なる孤独と苦悩へ』(楽想目、PC、2017年)

『親愛なる孤独と苦悩へ』レビュー:天の同人作家に捧ぐテキスト

『親愛なる孤独と苦悩へ』にも選択肢が1ヶ所だけ設けられている。しかし不思議なことに、正しくない選択を選んでもすぐに元のシーンに戻されるのである。そこにいかなる説明もない。
 詳細は実際にプレイしていただくとして……この選択肢にいかなる意図があったのか? ある程度の推察まではできたとしても、作者はもう亡くなられており、正確なところはわからないのが残念だ。

 ノベルゲームにおいて選択肢を少なくする理由の第一は(特に商業作品の場合は)コスト削減だが、プレイヤーに対して大きな意味を突きつけることもできる。そんなストーリーを考えることができたなら、クリエイター冥利に尽きるだろう。

© お茶みどり
© 楽想目