アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第23回『No・Ri・Ko』

『No・Ri・Ko』(ハドソン、PCエンジン、1988年)

発売元:ハドソン
初出:1988年

 1987年、ハドソンと日本電気ホームエレクトロニクス(NECホームエレクトロニクス)がファミコンのライバル機として送り出したPCエンジン。この機種には当初から「コア構想」に基づく拡張バスが搭載されていた。そして1988年、コンソールとしては世界初の光学ドライブを採用した周辺機器CD-ROM²が発売される。ローンチタイトルは2本あり、そのひとつが『No・Ri・Ko』である。

冒頭のコンサートシーン

 子役としてキャリアを重ね、当時はアイドル・女優として活躍していた小川範子を起用したミニアドベンチャー+ミニゲーム集。主人公は落とし物の定期券を届けた縁で彼女のコンサートに誘われ、翌日のオフに一緒に遊びに行き、その日のうちに別れる……せいぜい数十分もあればクリアできる小品で、その構成自体に特筆するところはない。
 しかし本作には何と言っても世界初の要素がある。ファミコンが2~3Mbitでやりくりしていたところ、CD-ROM²は540MB。この圧倒的大容量を活かし、生身の人間のボイスと歌声を搭載したのだ。音質も非常にクリアで、ビデオゲームにおける革命だったといっても差し支えない。
 またゲーム開始時にはプレイヤーネームを入力するのだが、終盤で小川範子がその名前を呼びかけてくれる。ひらがなを一文字ずつ発音するという単純なものだったが、キャラクターに自分の名前を呼びかけてもらうというのはシンプルに嬉しいもので、のちに『ときめきメモリアル2』(コナミ、1999年)などが採用することになる。ほんのおまけ要素ではあったかもしれないが、この先駆性は注目されるべきだろう。

小川範子の多彩なポーズ

 コンパクトな作品だが、世界初のCD-ROMゲームなのでノウハウも蓄積されてはおらず、開発には大きな苦労があったようだ。大容量が使えるからと質の高いグラフィックを手軽に実装できるわけではなく、分量が多いだけ人手が必要になる。また音声をスキップするという発想がなく、デバッグ中にコンサートシーンの歌を延々と聞き続けなければならなかったというエピソードもある。

 CD-ROM²ではこの後も『鏡の国のレジェンド』(1989年)、『みつばち学園』(1990年)、『井上麻美 この星にたったひとりのキミ』(1992年)など、同様にアイドルを起用した実写取り込みアドベンチャーゲームがリリースされていく。ごく短期間、小規模ではあったがひとつのジャンルを形成し、明確にターゲットを定めたビジネスとなったのだ。

【参考文献】
岩崎啓眞『ハドソン伝説4・CD-ROMの夜明け』(2022年)

© Konami Digital Entertainment Co., Ltd.

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