アライコウのノベルゲーム研究所

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『The Law of Contradiction』レビュー:奈須きのこが大絶賛したFate二次創作ノベルゲーム

『The Law of Contradiction』(玖次元、PC、2006年)

 

 本記事は2017年8月に公開していたブログ記事の、微調整の上での再掲となる。
 Fate二次創作ノベルゲームの中でも、今でも印象深い作品だ。
 あれから長い年月が経ったが、今や『Fate/Grand Order』にバゼットもシエルも参戦しているとは感慨深いものがある。

 


 

 同人ノベルゲームに多大な影響を与えたTYPE-MOONの『月姫』(2000年)、そして『Fate/stay night』(2004年)。当初これらの二次創作といえばアクションなどの他ジャンルがほとんどで、本格的な物語性を持つ作品はそうはなかった。ノベルゲームにするとなると、TYPE-MOON作品の圧倒的な映像演出、そして奈須きのこ氏の文章力には敵うべくもないので、自然と制作者も敬遠していたのだろう。
 しかしサークル玖次元がリリースした『The Law of Contradiction』は、本家に勝るとも劣らない演出を兼ね備えた一級のノベルゲームで、奈須氏も大絶賛していたのだ。

対峙するバゼットとシエル

『Fate/hollow ataraxia』(2005年)にて人気を博したバゼットを主人公に据えた短編で、ゲームエンジンにはFlashが使用されている。そして立ち絵を用いずに、一枚絵の連続のみで構成されているのが特徴だ。
 バゼットがとある街で死徒退治に乗り出し、そこへ標的を同じくする『月姫』のシエルが参加してくるというのが大まかなあらすじ。演出だけでなく文章も本家に迫るもので、クールで躍動感があり、これには目の肥えたTYPE-MOONファンも満足だろうと思わせた。
 死徒との戦いなど前哨戦に過ぎず、クライマックスは魔術協会のバゼットと聖堂教会のシエル、相容れないふたりのすさまじい激闘! このシーンにはFateを初めてプレイしたときのような感動が蘇ってきたものだ。

 プレイ時間はわずか1時間ほどだが、非常に濃密。幸いなことに今は公式によりフリー公開されているので、ふたりがどのように決着したのかぜひともプレイして確かめてもらいたい。

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© 玖次元