
※画像はPS版(1996年)
発売元:コナミ
初出:1994年
『スナッチャー』で鮮烈なアドベンチャーゲーム体験を残した小島秀夫監督は、次の舞台にスペースコロニーを選んだ。『ポリスノーツ』は1994年、まずはPC-9821用にリリースされ、のちに当時の次世代機と呼ばれる3DO、PlayStation、セガサターンに改良した上で移植された。


宇宙飛行士としての訓練を受けた警察官「ポリスノーツ」。その最初の5人のひとりに選抜された主人公ジョナサン・イングラムは、任務中の事故で宇宙空間に投げ出されてしまう。人工冬眠状態で奇跡的にも救出された彼だったが、この時すでに25年の年月が過ぎていた。以降ジョナサンは地球でしがない私立探偵を営んでいたが、かつての妻のロレインが依頼人としてやってきた。しかしその直後ロレインは何者かに殺害されて……。
前作の映画的演出がさらに強化されている。例としてキャラクターボイス再生時の字幕は中央寄せの瞬間表示となり、そのキャラクターの初登場時にはキャスト名も表示され、さながら吹替洋画の趣だ。

射撃モードはより緊迫感を増している。前作は9つに区分されたマスに合わせて撃つシステムだったが、そのマスが撤廃され、画面全体を素早くスムーズに動き回る敵に照準を合わせなければならない。このために全体的な難易度は前作以上となっている。
なおセガサターン版では銃型コントローラーの「バーチャガン」が使用できた*1。セガサターン版開発当初からの小島監督の考えで、一長一短はあるものの通常コントローラーでは味わえない臨場感があった。ジョナサンの持つ銃が時代物という設定が現実に反映された形だ。


射撃以上に難易度が高いのが爆弾解体シーン。先例である『ノスタルジア1907』はコマンド選択型だったので手順さえ覚えていけば問題なかったが、本作はプレイヤー自身の緻密な操作で解除を試みなければならない。
私も何度も失敗してしまったのだが、ゲームオーバーになってもふたりの台詞が変化していき、メタ発言まで飛び出すのには思わず笑いが漏れてしまう。プレイヤーが途中で投げ出さないための配慮であるのと同時に、細かいことはいいからゲームとして楽しいものにしたいという小島監督のセンスが際立っている。
本作をバディ物として作りたかったと小島監督は語っている。時代に取り残されたジョナサンと、年老い窓際刑事となっていたエド・ブラウン。事件の謎を追う中でふたりは次々に凄惨な現場に直面し、生死と隣り合わせの戦いに臨むが、時にコミカルなアクションも見せる。
かつての仲間との衝突、人類の宇宙進出に伴う弊害、血の繋がらない家族愛、巨大企業の陰謀――幾重もの重厚なテーマが織り成すSFストーリーは見事の一言だが、それ以上にいい歳した男同士の生き生きとしたやり取りこそが本作の真髄。そしてすべてが終わり友情を確かめ合うラストシーンは、言葉に尽くせない感慨をプレイヤーにもたらすだろう。ジョナサンとエドは間違いなく、本邦ノベル・アドベンチャーゲーム史に残る名バディだ。
当時の小島監督の集大成となった秀作であり、歴史的にもきわめて価値の高いゲームである。『スナッチャー』と違って復刻版がリリースされたことはなく、現行機でのダウンロード販売もないが、プレミアは付いておらず実機プレイが比較的容易なのは幸いだ。
【参考文献】
『ポリスノーツ 公式ガイド』(NTT出版、1996年)
© Konami Digital Entertainment Co., Ltd.
*1:ブラウン管テレビ向けの機器なので、現在のテレビではプレイ不可能。