
発売元:バンダイ(バンダイナムコゲームス)、バンプレスト、マーベラスインタラクティブ
初出:1996年
日本人にもっともミステリーを親しませたコンテンツは何か。その最有力候補のひとつが青山剛昌氏の漫画『名探偵コナン』だろう。1994年から30年以上も連載が継続しており、テレビアニメシリーズは放送1000回以上、劇場用アニメも毎年公開され大ヒットを記録している。当然ながらビデオゲーム作品も数多くリリースされており、コンソールのアドベンチャーゲームに限っても20作近くを数える。その分量だけを考えても大きな功績だ。
この手の大ヒット漫画やアニメを原作に持つゲームはしばしば「キャラゲー」と軽視されがちだが、コナンシリーズは必ずしもその評価は当てはまらず、ミステリーアドベンチャーゲームのデザイン的に見逃せない要素も何点か確認できる。

最初に発売されたのはゲームボーイ『地下遊園地殺人事件』(1996年)。新たにオープンした遊園地に招待されたコナン一行が殺人事件に遭遇するという流れだが、その殺人事件が3種類に分岐し、犯人も手法も異なってくる。
進め方によってキャラ設定もシナリオのジャンルも変わってしまうというのは『かまいたちの夜』など前例があるが、同じ殺人事件という枠組みで複数のバリエーションを用意するのは現在でもそうはない。なお事件のひとつは「ジェットコースター殺人事件」。あえて原作の最初の事件と同じにしたのはファン向けのサービスだろう。
ゲームボーイの限られたリソースの中では、あまりグラフィックを増やした長編は難しい。舞台と登場人物が同じ短編を複数用意するというのはハードの制限がもたらしたアイディアと言える。クリアタイムに基づくランク制も搭載しており、アドベンチャーゲームではまだ珍しいものだった。これが好評を得たようで、続編の『疑惑の豪華列車』(1998年)も同様のシステムとなった。上位機種のゲームボーイカラーでも3作品がリリースされたが、容量問題をクリアしたこともありいずれも一本の長編となっている。

据え置き機での初登場となったPlayStation『名探偵コナン』(1998年)はテレビと同等の高品質アニメーションが見どころだが、謎解きや進行に関わるミニゲームが8種類も登場する。
声優のフルボイスがあるとはいえ、せっかくの高性能ハードなのだから、マップ移動とテキストばかりでは遊び甲斐がない。古くは『さんまの名探偵』などにも見られた工夫だが、多彩なミニゲームを取り入れたのは「キャラゲー」の面目躍如というところだ。

ワンダースワンにも三部作『魔術師の挑戦状!』(1999年)、『西の名探偵 最大の危機!?』(2000年)、『夕暮れの皇女』(2001年)を送り出している。ワンダースワンは短命に終わってしまったハードとして知られるが、横持ちと縦持ちで使い分けられるという特徴があった。縦持ちの際の画面はいかにも探偵手帳という趣きで、雰囲気作りにも成功している。
この三部作でひときわユニークなのが「マルバツール」なるシステム。キーワードが交差するマスを○と×で埋めていくというもので、推理とパズルの楽しさを併せ持っている。おそらくはシリーズの中でもっともマイナーだが、ハードの特性を活かした着眼点は侮れない。
以降もニンテンドーDSではタッチペンを、Wiiではリモコンを活用したシステムを搭載した。あらゆるハードに対応してファンに継続的に届けられたのは、開発者の努力はもちろんだが、コナンの持つキャラクターの強さとゲーム映えする柔軟性があってのものだろう。オリジナルのミステリーアドベンチャーゲームではそう簡単には真似できないものだ。
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