アライコウのノベルゲーム研究所

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『杏アフター』レビュー:杏に幸せになってほしい人へ

『杏アフター』(空白症候群、PC、2009年)

 

 本記事は2018年3月に公開していたブログ記事の、微調整の上での再掲となる。
 二次創作かくあるべしというような、良質なifストーリー。
 18禁が苦手でなければ、ぜひとも原作ファンにプレイしていただきたい。

 


 

 ビジュアルアーツ/Keyが『Kanon』『AIR』に続き2004年に発売した『CLANNAD』は、元より人気のあった同ブランドの評判をさらに盤石にした名作。そして2007年から2009年にかけて放映されたテレビアニメ版で、より多くのファンを獲得した。
 同人作品も様々なものが作られたが、その中でも良質なノベルゲームとして自信を持って推奨できるのが、サークル空白症候群の『杏アフター』だ。

汐の面倒を見ようと申し出る杏

 渚が亡くなり、汐との生活を再開してからしばらく。自分の誕生会を仲間たちと祝うくらいに、朋也は日常を取り戻していた。そんな時、一時的に仕事が忙しくなることになった朋也は、汐の世話を杏に任せることになる……。
 このように「杏ルートのアフター」ではなくて「アフターストーリーにおけるif」の物語だ。オープニングでの愉快な掛け合いから始まって、母親のような存在感を持ち始める杏に心揺れる朋也、朋也の幸せを願う古河の両親、そしてずっと秘めていた杏の想い。どれもが淀みなく描写され、キャラの台詞がアニメ版のボイスで脳内再生されること請け合い。作者は本当に『CLANNAD』が、そして杏が好きなのだなと随所で思わせた。

 朋也も杏も立派な大人なので、ふたりきりになればどちらからともなく体を重ねる。性愛と物語が見事に両立しているのが本作の美点だ。こうした二次創作ノベルゲームはそう多くない。
 そして「渚の代わりではない、藤林杏として一緒にいてほしい」という朋也の言葉は、古めかしい黄金パターンとわかっていてもグッと来た。山あり谷ありの末に迎えるハッピーエンディングは、杏ファンならば感涙だろう。

やがて想いが通じ合うふたり

 選択肢はなく、2時間程度の短めなプレイ時間だが、非常に上質なifストーリーだった。何より杏に幸せになってもらいたいなら、これをプレイするしかないのでは。さらにアフターが読める続編があるので、ぜひそちらも合わせて。

© 空白症候群

 


 

 サークルの活動はもうずいぶん前に停止しているが、DLsite.comでは今でもダウンロード購入が可能。Windows11での動作も確認済みだ。

杏アフター(18禁)

杏アフターアフター(18禁)