
※原作:夢野久作
本記事は2013年10月に公開していたブログ記事の、微調整の上での再掲となる。
著作権切れ名作のノベルゲーム化の中でも特にハイクオリティなのがこのシリーズ。
自分でも試したいという制作者がいれば、ぜひ参考にさせてもらおう。
著作権が消失した作品をノベルゲームにするという試みは、2004年頃から見られるようになった。それを知った私も『名作サウンドノベルシリーズ』という名称で太宰治や芥川龍之介の作品を題材にかなりの数をノベルゲーム化したことがある。
この有意義な試みは徐々に認知されるに至り、中には驚くようなクオリティに仕上がるケースも出てきた。その中のひとつが個人サークル言ノ葉迷宮による『ゲームライズド・ノベル』シリーズである。

※原作:エドガー・アラン・ポー
現在公開されているのは5作品で、甲賀三郎『贋紙幣事件』『お初桜事件』、夢野久作『瓶詰の地獄』、エドガー・アラン・ポー『モルグ街の殺人事件』、坂口安吾『不連続殺人事件』。見事にミステリー作品中心のラインナップだ。ミステリーの源流のようなものを探りたい人には実に嬉しい。そしてインターフェイスや背景画像の選定が優れていて、作品の持つ味を充分に引き出している。

※原作:坂口安吾
古典作品の素晴らしいところは、ストーリーの流れ以上に、古めかしくも格調高い文章だったり、時代背景だったり、当時の考え方だったり、風俗だったりする。上記5作品も例に漏れず、19世紀~20世紀初頭の生活感を味わうことができる。こうしたものは、現代の小説ではそうお目にかかることができない。単にストーリーを追うだけでなく、温故の気持ちで読むのがいい。
また古典は文章レベルの高さが逆に弊害となり、えてして読みにくかったりするものだが、音楽やシルエット画像を盛り込むことによって格段にリーダビリティが高まり敷居が低くなる。上記5作品、文字だけではあまり読む気がしないという人も、これなら平気のはずだ。
ともあれ著作権切れ作品のノベルゲーム化は素晴らしく、さらに多くの人に広まることを願う。ちなみにプレイヤーだけではなく、これからノベルゲーム制作しようという人にもお勧めだ。何しろ良質な文章素材がただで手に入り、いい練習になる。
ひとつ個人的な思い出がある。2007年、著作権切れ作品のアーカイブ「青空文庫」の主宰者である故・富田倫生氏に『名作サウンドノベルシリーズ』を評価いただき、青空文庫10周年記念イベントにお誘いいただいた。この取り組みを続けて本当によかったと感慨深くなったものだ。
あれからずいぶん経ったが、著作権切れ作品のノベルゲームというコンテンツが有力という考えは、もちろん2025年の今も変わっていない。