アライコウのノベルゲーム研究所

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『月代 -SAKAYAKI-』レビュー:抱腹絶倒のちょんまげコメディ

月代 -SAKAYAKI-』(綾の国、PC、2007年)

 

 本記事は2013年9月に公開していたブログ記事の、微調整の上での再掲となる。
 これほどの出オチがあるだろうかという、今もなお他の追随を許さないほどのインパクトを誇る作品。大いに笑わせてもらおう。

 


 

 ノベルゲームプレイヤーである私だが、乙女ゲームにはさほど縁がなかった。商業作品、有料同人ゲームで手を出したことは両手に余る回数だし、フリーゲームでもたいした数をプレイしてはこなかった。
 それでもこのジャンルは、時として男性が到底発想し得ない作品を生み出すことを知っている。『月代 -SAKAYAKI-』はその代表的存在だ。

ちょんまげ少年・月代 卒太(さかやき そつた)

 寒来(さむらい)高校の入学式。主人公の原沖麗(はらおき・れい。名前変更不可!)は学校へ急ぐ途中、ひとりの少年にぶつかる――と、ド定番の出だしからプレイヤーは驚愕のちょんまげブラックホールに吸い込まれていく。
 ひとまず説明すると、月代(さかやき)とは額から頭頂部にかけて剃り上げた、時代劇でおなじみの髪型である。公式サイトの「【注意!】このゲームには、光る額の表現が含まれます。」からしてセンスが炸裂している。

システムボタンに注目

 というわけで、登場する男性キャラクターはどいつもこいつも光る頭の持ち主。こんなゲームはそうお目にかかれるものではない。コメディなので全編通して面白おかしく進行していくが、ノリノリでちょんまげに惹かれていく主人公がたまらない。
 選択肢によっては常識的な道を歩むルートに入るが、そちらでのツッコミも真剣のごとく切れ味鋭くて愉快だ。そしてシステムメニューを選ぼうとしたら、ぴょこんとちょんまげが飛び出たり、ちょっとした小ネタが素晴らしい。

 唯一無二の月代萌え乙女ゲームとして、プレイした者すべての記憶に残る怪作だ。プレイ時間の短い中に名(迷)台詞がたくさん詰まっているが、「毛根は引き止められなくても、君のことは離さない」を一番に挙げたい。頭髪が寂しい人はプロポーズの際に使ってみてはどうだろう。

© 綾の国

www.freem.ne.jp


 

 こんなゲームは後にも先にも現れないだろう。当時そう考えていたのだが……やはりほとんど現れてはいないようだ(坊主同士のBL作品があったくらいだろうか)。光る頭の男性キャラクターを攻略対象にするのは、たとえフィクションでも困難らしい。こうしたコメディ作品でもなければ。その目の付け所にあらためて感服である。