発売元:フォグ
初出:1998年
山田風太郎、荒俣宏、夢枕獏、菊地秀行らの活躍によって小説では人気ジャンルとして定着していた「伝奇」だが、これが本格的に採り入れられ勃興したのも90年代後半におけるノベルゲーム史の特筆事項だ。PCゲームにおいては『痕』(Leaf、1996年)がその立役者となったが、コンソールにおいてまず挙げられるのが『久遠の絆』だろう。
高校生の
武と万葉、そして周辺人物たちは、前世からの因縁に絡め取られた者同士だった。現代から始まり、平安編、元禄編、幕末編と時代を超えて描かれる、輪廻転生と愛の物語である。映画を見ているような感覚から「シネマティックノベル」とも標榜していた。この一本の長大なストーリーにまずはスポットを当てたい。
32bit機時代に入ってから、ノベルゲームはグラフィックや演出面で大きな進歩を遂げたことをこれまでも触れてきた。それはこの分野の根幹であるシナリオにも言える。複数の時代をまたぐアドベンチャーゲームは『タイムシークレット』『東方見文録』などSFの定番だが、長編小説何冊分ものシナリオとなると90年代後半にならないと実現は難しかった*1。キャラクター数もそれだけ増加し、時代毎に合わせたグラフィック素材を用意しなければならない。
ゼロ年代に加速するノベルゲームのボリュームインフレーション――『久遠の絆』はその端緒を開いた作品のひとつと位置付けられるのではないか。
シナリオの分量以上に壮大で重厚なのが、日本神話を基調としたテーマだ。古事記に語られる国造り、黄泉比良坂での
しかし物語の強さとは結局のところ、キャラクターの強さだ。幾度もの悲恋を乗り越え、輪廻転生の呪縛を断ち切らんとする恋人たちの姿に、プレイヤーは大いに感情移入した。大手メーカーではないため宣伝費もかけられない中、口コミだけでなく当時市民権を獲得しだしていたインターネットでも評価が広まったのである。
フォグ作品の中でも屈指の人気を獲得したばかりでなく、伝奇ノベルゲームのメルクマールともなった、今でも語り継がれる名作。のちにシナリオを加筆修正した『久遠の絆 再臨詔』がドリームキャスト、PlayStation2、PSPで発売された他、シナリオを全面改稿したアダルトゲーム『久遠の絆 THE ORIGIN』(ザウス、2011年)が発売されるという異色の展開もしている。
現在はグラフィックをレタッチした『再臨詔』のスマホ版がリリースされているが、何年も更新されていない状況で今後の保守には不安がある。『みちのく秘湯恋物語』『風雨来記』はSteamに移植されているが、同様の展開を期待しているファンは多いだろう。
© FOG / Nippon Ichi Software, Inc.
【参考文献】
『久遠の絆 公式原画&設定集 Love & Death』(ヘッドルーム、1999年)
『久遠の絆 ファンブック』(ラポート、2000年)
