アライコウのノベルゲーム研究所

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国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第60回『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』

流行り神 警視庁怪異事件ファイル』(日本一ソフトウェア、PS2、2004年)

発売元:日本一ソフトウェア
初出:2004年

『都市伝説解体センター』のヒットが記憶に新しいが、都市伝説という題材はノベル・アドベンチャーゲームにおいてしばしば扱われる。『学校であった怖い話』のように学校の怪談の枠組みで取り上げられることも少なくない。しかしその概要がおおむね知られているため、話の幅を広げづらいデメリットは否めない。どうしてもスケールが小さくなりがちで、クリエイターにとっては独自色を出すのが容易ではない題材と言える。
 そんな中で『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』はオリジナリティを示した作品だ。現在『風雨来記』シリーズなどフォグ作品の権利を受け継ぐ日本一ソフトウェアの、初めての本格派テキストアドベンチャーゲームである。

調査の方針を決めるセルフ・クエスチョン

 警視庁の非公式事件を扱う警察史編纂室に所属する主人公・風海純也が、チェーンメール、コックリさん、名前の無い駅といった、都市伝説に関連する事件を調査するのが大まかな筋書き。超常現象専門の秘密部署などという設定は警察ものでは珍しくないが、『流行り神』の特徴はあくまでも科学的な捜査に立脚しつつ、オカルト的なアプローチも否定しないというものである。
 風海はキャリア組のエリートでまだ若いが人当たりがよく、警察ものの主人公としては欠点の見られない好人物。熱血漢の刑事・小暮宗一郎とのコンビも抜群だ。柔軟な思考を持つ風海は多角的な考察を行うセルフ・クエスチョンによって結論を出し、これによって各話のストーリーは科学ルートかオカルトルートに分岐する。この選択肢でルートが分岐しますよ、とヒントを出してくれる作品は意外と少ないものだが、主人公のキャラクターを上手く活かした親切設計だ。

カリッジ・ポイントを消費する選択肢

 他にも独自のシステムが複数盛り込まれている。一部に風海の勇気が試されるような内容の選択肢があり、これらを選ぶ際はカリッジ・ポイントを消費する。これを不用意に使い果たしていると、後で重要な選択肢が出ても選べなくなる可能性がある。条件によって特定の選択肢が、表示されているにもかかわらず選べない――パラメータ不足により選びたいコマンドが選べなくなるという仕組みはRPGやシミュレーションゲームではお馴染みだが、そのノベルゲーム的な再解釈と言える。

推理ロジック

 シナリオ内の人物相関図を使って事件の概要を整理するのが推理ロジック。ところどころに空欄がある相関図に、入手したキーワードをはめ込んで完成させる。この可否によってエンディングが変化し、プレイ評価が決定されるのだ。これはミステリー系のアドベンチャーゲームと相性がよく、類似のシステムが後続作品でも見られる。

 そもそも都市伝説の魅力とは何であろうか。本作でも重要なキーワードである、F.O.A.F(Friend of A Friend=友達の友達)によって広められた掴み所のない恐怖というのが挙げられるだろう。誰が言い出したか不明だがいつしか定着した物語。様々なバリエーションが存在し、真実がひとつとは確定されず、全容が把握できない。『流行り神』もいったんのエンディングを迎えても、いい意味での気持ち悪さが拭えない。つまり物事ははっきりさせなくてもいいと教えてくれるのだ。こうしたスタイルもまた、ビデオゲームの多様性を確保してくれるものだと思える。

 2007年には2、2009年には3と順調に続編を発表し、移植も盛んに行われた。2014年からはキャラクターを一新した『真 流行り神』がスタートし、こちらも3作までリリースされている。日本一ソフトウェアの代表的なアドベンチャーゲームシリーズであり、重要IPとして今後も根強い展開が期待される。今からプレイするなら現行機向けの『流行り神1・2・3パック』がおすすめだ。

© Nippon Ichi Software, Inc.

流行り神1・2・3パック - Switch

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