発売元:エンターブレイン
初出:2009年
現在KADOKAWAのブランドとして名を残しているエンターブレインは、さらにそれ以前のアスキー時代から多彩なビデオゲームや『RPGツクール』シリーズなどコンストラクションツールを世に送り出してきた。その中のひとつに『ときめきメモリアル』ブームを受けて誕生した『トゥルー・ラブストーリー』(1996年)がある。これが恋愛ゲーム戦国時代の中好評を受けてシリーズ化され、そのテイストを継承した『キミキス』(2006年)も多彩なメディアミックスがされるなど一定の評判を得た。そして2009年、それまでの集大成と位置づけられる大作『アマガミ』が登場する。
季節は冬。恋に焦がれる主人公はクリスマスイヴまでの約一ヶ月、学園内の魅力的なヒロインたちとどのように過ごすのか……ストーリーは恋愛ものの基本フォーマットに則っているが、第一のセールスポイントはキャラクター。「天下無敵の仮面優等生」「ふかふかボディの純情少女」「男殺しの天然女王」……これらはマニュアルにも記載されている公式のコピーだ。それまでのシリーズはキャラクターデザイン含め、癖がなく現実的な造形だった。これもこれで魅力的だったが『アマガミ』のヒロインたちはフィクションらしいキャッチーな路線に舵を切り、結果的に大きな成功の要因となる。
攻略は主に2つのパートから構成され、まずは行動マップ。一枚のマップの中に主人公の行動を決定するための様々なアイコンが配置されており、これを元に目的のヒロインを追いかけ、各種イベントを発生させていく。恋愛ゲームのマップと言えば単にヒロインのアイコンを選んでいけば何かが起こる、というものが主流だったが、今後起こり得ることとこれまでに起こったこともひとまとめにして、ヒロインたちとの積み重ねを表現可能にするというのは画期的だった。
そして会話モード。相手がしたいと思っている話題が手札として表示されており、これを予想して会話を進行させていく。話題がヒットすれば相手の好感度ゲージが上昇し、最大になったなら「アタック」を仕掛けてごほうびイベントや下校デートを狙っていく。相手の手札が判明していなくても、ある程度は次第に予測できるようになるという設計が、恋愛レベルアップ中の主人公とプレイヤーを巧みにリンクさせている。
『キミキス』まではランダム要素が盛り込まれており、これが時として攻略の障害になっていた。しかし本作ではランダム要素を撤廃し、狙ったヒロインと確実に仲良くなれるようになっている。よりプレイしやすくしたのも人気を博した要因だ。
基本的には浮気せずにひとりのヒロインを追っていけば幸せなエピローグを見られるようになるが、複数のヒロインと同時に仲良くなっていくこともできる。当然ながらその報いは受けることになり、浮気現場を目撃されても一度目は切り抜けられるが、二度目ともなると「テキタイ」という状態になる。こうなると関係は修復不可能に。クリスマスデートを2人と約束して、片方をすっぽかすという鬼畜の所業さえ可能。恋愛ゲームにおいて同時攻略は、メタ的には醍醐味のひとつだが、ゲーム内の攻略対象からすると許されざる行いに違いない。そんなプレイヤーの選択の結果を容赦なく突きつけるのも『アマガミ』の特徴で、これは開発陣も力を入れていたことだった。
――シナリオといえば、今回はプレイヤーにとって手痛いイベントが……。
高山*1:それはもう、コンセプト中のコンセプトです。プレイヤーに驚いてほしいという気持ちが大前提としてあったので。
石川*2:プレイヤーが選んだことに対して、ちゃんと答えを用意したかったんです。シミュレーションを謳うからには、と。――「『アマガミ』制作秘話」『アマガミ オフィシャルコンプリートガイド』P259
魅力的なキャラクターを十二分に活かす、膨大な数のイベントとやり込み要素。『ときめきメモリアル』が偉大なる初代ならば、『アマガミ』は三代目にして完成を見たと言えようか。前作以上の売上と評価を得て、二度ものテレビアニメ化を果たしたのは特筆すべきことだ。さらに驚くべきは現在も商品展開が行われていること。何よりもキャラクターの強さがIPとしての長寿化に貢献したのである。
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【参考文献】
『アマガミ オフィシャルコンプリートガイド』(エンターブレイン、2009年)
