ノベル・アドベンチャーゲームにおいて、ループ系作品は人気ジャンルのひとつだ。今も様々な作品が生み出されているが、それだけクリエイターにとって取り組み甲斐のある題材と言える。
さて一般にループ系というと、何らかの理由で繰り返される世界をストーリーで見せていく、というものを想像されるだろう。その中で主人公たちは苦悩しながら問題解決を目指す。これを「ストーリーとしてのループ」と呼称しよう。
本稿ではまず、それ以前の「システムとしてのループ」を見ていきたい。ストーリーの進行度合いに関わらず、プログラム処理の結果として文字通り以前の地点に戻る構造を持つ、原始的なループのことだ。
『時空の旅人』(ケムコ、1986年)は核戦争の起こる未来を変えるため、主人公がタイムマシンを駆使して各時代を行き来するという内容。1582年、本能寺で織田信長と出会うところからゲームはスタートする。
歴史上の人物からの問いかけに「はい」か「いいえ」の二択で答えていき、その結果によって異なる時代にワープするのだが、場合によっては1582年の本能寺にまで戻されるのだ。パズルめいた時空の中、プレイヤーは問答を何度も切り抜けつつエンディング(通常のエンディング5種、真のエンディング1種)を目指していく。
主人公がまったく喋らずテキストが味気ない、堂々巡りに陥りがち、すぐにゲームオーバーになってしまうなどが原因で、『時空の旅人』は『ミシシッピー殺人事件』と同じく、ファミコン初期の低評価アドベンチャーゲームのひとつとして有名になってしまっている。
ゲームとしては確かに失敗しているだろう。しかしその要素をひとつひとつ抜き出してみれば、実は最初期のループ系作品としてなかなか興味深い部分もあるというのが私の評価だ。「もっと面白くできるのではないか?」と思えたなら、あなたにはアドベンチャーゲームクリエイターの資質がある。
『Prismaticallization』(アークシステムワークス、1999年)も、システム的に何度も最初に戻ってしまうことが運命付けられている。
国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第56回『Prismaticallization』
詳細は上記記事に譲るが、主人公は謎のオブジェの取得後、ループを自覚することなく循環世界を幾度となく巡っていく。正しい攻略手順でなければストーリーが進まず、何百周しても終わらないのだ。マイナーな作品だが、そのゲームデザインには意欲的なものがあった。
※画像はPS4リメイク版(MAGES.、2017年)
こういったシステムとしてのループを、ストーリーときわめて深く融合させていたのが『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(エルフ、1996年)。本作の根幹を成すのがA.D.M.S、「Auto Diverge Mapping System(オート分岐マッピング・システム)」と称した画期的システムだ。
これは多彩に枝分かれする物語世界を、目に見えるマップとして作成するもの。プレイヤーはマップ上の任意の地点に「宝玉」というアイテムを配置することで、いつでもその「宝玉セーブ」地点に戻ることができる。そうして並列世界を旅しながら謎を解いていき、ついに次の世界に進めた時の感動がループものの金字塔としての評価を確固たるものにしたのだ。
本作について語るべき事は多いが、いずれ200選のひとつとして取り上げたい。
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