アライコウのノベルゲーム研究所

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国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第69回『アナザーコード 2つの記憶』

アナザーコード 2つの記憶』(任天堂、DS、2005年)

発売元:任天堂
初出:2005年

 タッチペン、タッチスクリーン、そしてデュアルスクリーン。画期的なインターフェイスを備えた任天堂の携帯型ゲーム機ニンテンドーDSは、2004年12月に発売されるや日本国内はもちろん海外市場でも空前のヒットを記録した。
 ビデオゲームの遊び方を根本から捉え直したこのゲーム機は、ノベル・アドベンチャーの分野においてもそれまでとはまったく異なるプレイ感覚をもたらした。その機能を十全に活かした初期の佳作としてまずは『アナザーコード 2つの記憶』を挙げたい。

ブラッド・エドワード島へと向かう主人公

 13歳最後の朝、主人公の少女アシュレイは叔母のジェシカとともに小さな船の上に乗っていた。目的地は今や寄りつく者はいないという無人島のブラッド・エドワード島。死んだはずの父親リチャードが生きていると知らされたアシュレイは、彼と対面するべく複雑な気持ちのまま島に上陸したが……。

 プレイヤーは見下ろし型の画面上でアシュレイを操作し、島を探索していく。その途中に数々の謎と仕掛けが用意されており、解き明かさなければ先には進めない。これ自体は多くの先行例があるわけだが、本作が提示したのはタッチペンとタッチスクリーンによる、従来よりも格段に直感的な操作だ。

タッチペンを駆使して仕掛けを解く

 一番の基本となるタッチとスライドの他に、これを組み合わせての引っ張る、回す、擦るといった操作がある。角度と強さに気をつけながらボールを目標に向かって放るミニゲーム風の仕掛けもあれば、本体のマイクに息を吹きかけるというレトロゲームファンにはファミコンのⅡコンを連想させるテクニックも必要となる。
 筆者がもっとも驚いたのは二つ折りになっている本体の開閉によるギミックだ(ここがさっぱりわからず攻略サイトに頼ってしまった)。ニンテンドーDSの謎解きアドベンチャーの操作のアイディアは、この一作で大半が出揃っていたのではと思えるほどの豊富なパターンがあり、プレイヤーとしてだけでなくクリエイターとしても好奇心を刺激された。

相棒となるゴーストの少年ディー

 一度エンディングを迎えるまでは約6時間。当時としてはコンパクトだが、令和の現在から見るとむしろプレイヤーに負担のないボリュームと感じる。悲劇に見舞われたアシュレイと家族たち、そして長年島をさまようゴーストのディー。謎を解く度に彼女たちの背景も明らかになるが、ほどよいボリュームのおかげで終始良好な緊張感を保つことができた。
 シナリオ・ゲームデザインを担当したのは『J.B.ハロルドの事件簿』シリーズなどを手がけていた鈴木理香氏。古き80年代PCゲームの雰囲気をよく知るベテランクリエイターだが、『アナザーコード 2つの記憶』はその時代の謎解きアドベンチャーを換骨奪胎し、まったく新しい形で仕上げたと言えるだろう。「さわれる推理小説」というキャッチコピーはビデオゲームの新時代の幕開けにふさわしいものだった。

 2009年には続編の『アナザーコード: R 記憶の扉』がWiiで発売された。鈴木氏も所属していた開発元のシングはほどなく倒産してしまったが、2024年にはNintendo Switchで2作を収録したリメイク版『アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉』が発売され、往年のプレイヤーを驚かせた。今ならこちらがプレイしやすいが、あえてオリジナル版に触れて考え抜かれたギミックを味わうのもおすすめだ。

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