アライコウのノベルゲーム研究所

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国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第72回『極限脱出 9時間9人9の扉』

極限脱出 9時間9人9の扉』(スパイク、DS、2009年)

発売元:スパイク
初出:2009年

 脱出アドベンチャー。広義には探索・謎解きアドベンチャーに含まれる、歴史の長いジャンルである。
 2000年代に入ると、インターネットとゲーム開発環境の発達によりフリーゲーム、特にFlash製のWebブラウザ向け脱出アドベンチャーゲームが盛んに作られるようになった。コンパクトながらやり応えのあるゲームが、アマチュアクリエイターとユーザーの間で人気を博すようになったのだ。
 しかしこのジャンルは、そのコンパクトさこそがひとつの弱点だった。アマチュアのフリーゲームならばいいとして、膨大化の一途を辿る21世紀の商業ゲームでは企画を成立させるのが難しいものだった。
 やがてニンテンドーDSが登場すると、タッチ操作が脱出アドベンチャーと相性がいいことが知られるようになる。『THE 密室からの脱出』(D3パブリッシャー、2007年)などが発売され、これらはやはりコンパクトさとお手頃価格がウリだったのだが、そんな脱出アドベンチャーの在り方を一変させたのが2009年発売の『極限脱出 9時間9人9の扉』だった。

脱出パート

 主人公の淳平が目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。「ゼロ」と名乗る謎の人物に連れ去られ、閉じ込められた場所。そこは沈みゆく客船の中だった。淳平を始めとする9人の人物たちは「ゼロ」から突きつけられたゲームをクリアし、9時間以内に脱出しなければ海の藻屑となることに……。
 まず脱出パートは、探索しながら必要なアイテムを入手していき、立ちはだかる謎を解いていくというスタンダードな形式。時にはアイテム同士を組み合わせて新しいアイテムを作成していく。
 この脱出パートの難易度は決して高くない。16進数を用いる謎が複数あり、慣れない人には少し厄介という程度だろうか。全体的には作中のヒントをよく読めば比較的容易に解けるようになっている。これはストーリーパートとのバランスを取るためだろう。

選ぶ扉によってルートが分岐する

 ストーリーパートはニンテンドーDSの二画面を活かし、上画面ではメッセージウィンドウでの会話劇が進み、下画面では全画面でのノベル形式で読ませるという珍しい形式となっているのだが、これがとにかくボリューム十分。マルチルートとマルチエンディングを採用しており、私のプレイ時間は20時間ほどだっただろうか。据え置き機やPCの大作と比べればさすがにコンパクトだが、脱出アドベンチャーとしては前例のないものだった。
 プロデューサーは『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』『428 〜封鎖された渋谷で〜』のイシイジロウ氏、シナリオ&ディレクションは『Ever17 -the out of infinity-』の打越鋼太郎氏と、ノベルゲーム界で実績を誇るクリエイターが中心となって作られている。この座組でただのノベルゲームになるわけはなかった。

 最初の謎を解き、捕らわれた者たちが全員集合したものの、ほとんどが見知らぬ他人同士。協力し合わなければならないはずが早くも犠牲者を出してしまう――という展開は王道ながら十分な緊迫感だ。この序盤からはよくありそうな閉鎖空間サスペンスと思ってしまいそうだが、実は『Ever17』同様にビデオゲームならではの仕掛けが用意されている。
 そのため本稿では、やはり多くを語ることができない。ひとつ言えるのは『アナザーコード 2つの記憶』に匹敵するほどのニンテンドーDS本体の巧みな使い方(それも1種類ではない)があるということ。これを目の当たりにした時、私は心から感動し、これを思いついた時にほくそ笑んだであろうクリエイターたちに嫉妬の念を覚えたほどだ。

 2012年には続編の『極限脱出ADV 善人シボウデス』が、2016年にはシリーズ最終作の『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』が発売され、一連の『極限脱出』シリーズは海外でも高い評価を得ている。
 なお2017年には1作目と2作目を合わせた『ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック』が発売された。現在はこちらがプレイしやすいが、もしも可能ならばゲーム機本体の特性を活かしたオリジナル版のプレイも検討してほしい。

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