『星の聖杯』(NAOX、PC、2005年)
本記事は2000年代に公開していた自サイト記事の、微調整の上での再掲となる。
めったに見られないドラクエの二次創作ノベルゲーム。
しかし物珍しさだけではない、確かなクオリティがあったのだ。
古の精霊達の歴史も、栄光の勇者達の戦いも
今や遠い昔の神話となってしまった時代・・・
しかし人々は、現代の世においても
神話の時代から変わる事なく精霊神を信仰し
世界の頂点は神殿都市ダーマの大神官であった。
そんな大神官候補の一人である少女が修行の為に
かつて「黄金の国ジパング」と呼ばれた
東の島国へとやってきた。
そこでは何の変哲もない平和な日々が繰り返されていた。
・・・しかし、着実に忍び寄る暗雲、
「七曜節」
それは世界に絶望をもたらすと言われる
人々から忘れ去られた、もう一つの神話・・・
永遠に続くと信じて疑わなかった日常の終焉が
間もなく訪れようとしていた・・・――公式サイトより
ビデオゲーム界の巨頭『ドラゴンクエスト』の二次創作は非常に数多いのだが、たとえばかつて週刊少年ジャンプで連載されていた『ダイの大冒険』のような豊かな物語性を持つ作品はあまり見られない。しかし2005年に登場した『星の聖杯』は、 そのわずかな作品のひとつとして数えられる。
登場人物はシンシア、ターニア、キーファ、マリベル、フォズといったおなじみのドラクエキャラだが、舞台はパソコンや飛行機もある現代。彼らが我々とまったく同じ環境で縦横に動き回っている様子を眺めるのはそれだけで楽しい。会話は生き生きとし、行動は熱い少年少女たちのそれだ。主人公はオリジナルキャラだが、ドラクエキャラたちに負けない存在感を示しており、感情移入を妨げない。
メインヒロインのシンシア
5の双子の名前がティミーとポピーだったり、カリクティスという固有名詞があったりと、設定をノベライズ版になぞっているのがファンには嬉しい。だがこれは単なるネーミングではなく、作品の根幹を支えるものとなっている。高屋敷英夫*1、久美沙織*2の両氏が作り出した小説の設定をさらにアレンジして、まったく違和感なく世界観を構築していることに恐れ入ってしまう。
テキスト量はMB級だが途中でダレることもなく、 各シーンの連なりをテンポよく見せてくれる。タイトルにもなっている聖杯をキーワードに、平和を過ごす主人公たちに押し寄せる能力者たち。もちろんドラクエなので魔物も出る。どう解決するのかとプレイヤーは心臓を熱くさせるだろう。
良質なファンタジーアドベンチャーにして、ドラクエと現代を見事に融合させたファンメイドの佳作。ちなみに本家と同様に恋愛描写はほとんどないが、中途半端に盛り込むよりよほどいいと感じた。
© NAOX
現在も体験版のみダウンロードでき、ひとつのシナリオのエンディングまでプレイが可能だ。
作者のNAOX氏はX(旧Twitter)にアカウントを持っているので、興味のある方は訪れてみるとよいだろう。本作について、およそ20年経った今でも反響があるらしいのは驚かされる。
かれこれ20年も前に作った自作ゲームの問い合わせが来たり、自分の作品が知らない場所(中国のサイト?)にアップされているとか教えていただいたり…自分の知らんところで一体何が起こってるんだ?こわっ!
— NAOX (@NAOX_13) 2025年4月20日
