※画像はパワーアップ版の『Repeat』(2011年)
発売元:ブロッコリー
初出:2010年
アイドルものは今やキャラクターコンテンツの一大潮流とも言えるジャンルだが、ビデオゲームにおいても2005年にスタートした『アイドルマスター』シリーズ(バンダイナムコエンターテインメント)を筆頭に少なからずヒット作が生まれている。
その中でも男性アイドルをフィーチャーした女性向けゲームとしては、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズを何よりも挙げなければならないだろう。
アイドルや音楽家を夢見る少年少女たちが入学する芸能専門学校・早乙女学園。作曲家を志す主人公の少女は、アイドルを目指す男子とペアになり卒業オーディション優勝を目指すことになる。
最初のパートナー決め以外にルートが分岐することはなく、彼らとのストレートな物語が紡がれていく。ゲーム内期間は4月から3月までの一年間。この間にパートナーとの絆を音楽と恋愛の両面で進めていかなければならないが、決して真面目一辺倒ではなくギャグテイスト、ファンタジー要素も盛り込まれている。学園長のシャイニング早乙女(cv.若本規夫)は非常に強烈だ。
なお、バッドエンドは存在しない。途中で必要な条件に満たなくとも恋愛に発展しない友情エンドで幕を閉じる。これも一見の価値はあるだろう。
学園からの課題という形で、音楽に関する学力テスト、作詞テスト、演奏試験など様々なミニゲームも用意されている。演奏試験はひとつの曲をボタン操作で演奏していくが、苦手な人のためにEasyモードがあり、やり応えを求める人にはHardモードが用意されている。女性向けアドベンチャーゲームとしては、リズムアクションを盛り込んだという点でも珍しいものだった。
さて現実の世界では1960年代から多くの女性を魅了してきた男性アイドルだが、フィクションの世界で存在感を示す事例は限られていた*1。本シリーズのプロデューサーである紺野さやか氏も次のように語っている。
最初は社内だけでなくどこへ行っても「アイドルものは絶対に流行らない」と厳しい目で見られていました。企画を出した当時は女性向けでアイドル作品での成功例がほとんどなかったんです。
――「上松範康氏&紺野さやか氏 5周年スペシャル対談」『うたの☆プリンスさまっ♪ 5th Anniversary Book』 P275
苦難を乗り越え勝負に出たブロッコリーは、結果として見事成功を収めた。恋愛禁止令が敷かれた芸能学園でのスポ根めいた音楽の日々と、ひそやかな甘い愛の日々。ストーリーは王道で奇をてらってはいなかったが、何よりそれぞれのキャラクターに魅力があふれており、人気声優たちの熱演もあって好評を博したのである。
本編後の物語であるファンディスク『Amazing Aria』『Sweet Serenade』、卒業オーディションから一年後、事務所のマスターコースでの日々を描き先輩キャラも登場する『Debut』、さらにその続編の『All Star』『All Star After Secret』と数年の間に立て続けにシリーズが発表され、確固たる基盤を築いた。
しかしゲームのヒット以上に、そこから派生したテレビ&劇場版アニメ、コミカライズ、舞台など幅広いメディアミックスこそが本シリーズを支えている。とりわけキャラクターソングCDはかなりの数に上っている。アイドルであるキャラクターたちが、その名義でいくつもの歌をリリースすることになんの不自然もないわけだ。そうして現実のアイドルにも勝る勢いの商品展開が成功し得た。
ルビーパーティーやオトメイトの作品群と並ぶ女性向けゲームの代表格であり、またPSP発のオリジナルアドベンチャーゲームとしては、トップクラスのヒット作のひとつに数えられる。そしてビデオゲームの枠組みに留まらない、男性アイドルもののパイオニアという評価はもはや盤石のものだろう。
【参考文献】
『うたの☆プリンスさまっ♪ 5th Anniversary Book』(KADOKAWA、2016年)
© SAOTOME GAKUEN
*1:アイドルものとは言えずとも男性アイドル要素のある人気作品としてはアニメ『超者ライディーン』(1996年)が挙げられる。
