アライコウのノベルゲーム研究所

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国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第78回『ダンガンロンパ』シリーズ

ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(スパイク、PSP、2010年)

発売元:スパイク、スパイク・チュンソフト
初出:2010年

 ビデオゲームにおいて、裁判というワードは『逆転裁判』の登場以来、ほぼ常にこのタイトルを想起させるものだっただろう。それほど『逆転裁判』のストーリーとゲームデザインは革新的であり、ヒットするだけでなく少なからずフォロワーも現れた。
 しかしこの裁判というワードにまったく別の要素を当てはめる作品が現れた。閉鎖空間にてデスゲームを繰り広げる『ダンガンロンパ』である。

囚われた生徒たちと学園長のモノクマ

 政府公認のエリート養成学校であり「超高校級」の人材のみが集まる希望ヶ峰学園。主人公の苗木誠は特筆すべき才能はないが、抽選によってこの学園に入学枠を得た「超高校級の幸運」だった。そうして希望の学園に足を踏み入れた彼だったが、そこは謎の黒幕が支配する絶望の学園だった。閉鎖空間の中でやがて発生する殺人事件。仲間を殺した犯人だけが卒業できるという「コロシアイ学園生活」に巻き込まれた彼らの運命は……。

 ゲームは二種類のパートから構成される。まず「学園生活」パートで学園内を探索し、他の生徒と交流、協力しながらストーリーを進めていく。殺人事件が発生したあとは各所を調査し、証拠品や証言を集めていく。登場するのはいずれも際立ったキャラクター造形の持ち主だ。サイコポップというコンセプトが掲げられており、若者たちが殺し合うという陰惨なテーマを扱いながらも、どこかスタイリッシュで親しみの持てる作りになっている。これを象徴するのはなんといっても黒幕キャラクターであり本シリーズのマスコットでもあるモノクマで、ボイスを担当したのが名優の大山のぶ代*1氏というのも大きな話題となった。

学級裁判での「それは違うよ!」は本シリーズの名台詞となった

 そしてメインとなる「学級裁判」パート。新感覚のハイスピード推理アクションと銘打たれており、従来の推理アドベンチャーとは一線を画すシステムとなっている。これは数種類のモードが用意されているが、代表的な「ノンストップ議論」においては画面上を流れる矛盾した発言を狙い澄まし、あらかじめセットしたコトダマで撃ち抜く必要がある。すなわち弾丸論破だ。
 この斬新なシステムは、単なるアドベンチャーゲームではマーケティング上不利であるという現実的な問題から生み出された。プロデューサーの寺澤善徳氏は次のように語っている。

だったら、もうジャンルを変えてしまおう、「これはアドベンチャーゲームじゃないんだよ」というところから会社を説得しようと思ったんです。そこで、みんなで「ハイスピード推理アクション」というジャンル名を考え出して。でも、会社に「ジャンル名は新しくても内容はアドベンチャーでしょ?」とツッコまれてしまっては意味がないので、ホントにいままでにないものを作り出してみよう、というところからはじまっています。


――「ディレクションチームインタビュー」『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 ビジュアルファンブック』P114

 第一作の発売当時、現実において裁判員制度が導入されて少し経っていたという事実は見逃せない。重大事件の裁判に市民を参加させるという仕組みは、図らずもリアリティを持って受け入れられる下地が整っていたのだ。これにデスゲームとアクションを絡ませたのは、まさに『逆転裁判』以来の革新性だったと言える。

スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』(スパイク・チュンソフト、PSP、2012年)

 続編の『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』(2012年)は、打って変わって舞台を南国に移した。もはや生半可なシナリオでは前作からのプレイヤーを驚かせられないが、それはクリエイター陣も重々承知だっただろう。最初の事件から大きな衝撃を用意しており、見事期待に応えている。キャラクター面でも工夫があり、なかなかプロフィールが明かされない新主人公の日向創は本作の重要な謎のひとつ。そして学級裁判のアクション性はさらにバリエーションと難易度を増し、飽きさせない作りとなっている。

 外伝作品やスピンオフ作品が作られ、シナリオライターの小高和剛氏本人やミステリー作家の北山猛邦氏が手がけた小説なども話題になったが、ナンバリングタイトルは現在のところ『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』(2017年)までとなっている。しかし海外人気も高く、全世界累計出荷数は1,000万本を突破している*2。唯一無二の魅力を放つこのシリーズは、今後もファンを拡大していくだろう。

【参考文献】
『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 ビジュアルファンブック』(ソフトバンククリエイティブ、2011年)

© Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.

*1:1979年から2005年までテレビアニメ『ドラえもん』のドラえもん役を務めたことで知られる。2024年死去。

*2:「ダンガンロンパ」シリーズ 全世界累計出荷数が1,000万本を突破!
https://www.spike-chunsoft.co.jp/news/45830/