発売元:バンダイナムコゲームス
初出:2011年
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル』は、人気ライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(伏見つかさ、電撃文庫)を原作とするアドベンチャーゲーム。
本作を200選に選出したのは、単に良質なキャラゲーだからではない。ビデオゲーム業界初の画期的技術を採用していたからだ。その名はLive2D。2Dイラストの画風を生かしたまま立体的なアニメーションを加える技術で、現在はVtuberなど国内外のコンテンツにも多数採用されている業界のスタンダードツールとして知られる。
『俺の妹』の原作は主人公の高坂京介が、ひょんなことから萌えアニメや美少女ゲームの隠れオタクである妹・桐乃の人生相談に乗ることになり、険悪だった兄妹仲を回復させていくというあらすじ。このゲーム版は、桐乃だけでなく他の女の子たちの人生相談にも乗るというマルチストーリー&マルチエンディング構成となっている。原作者の伏見氏も監修とシナリオで全面的に関わっており、ルックも原作イラスト&アニメとほぼ同じクオリティなのが嬉しいところ。原作にはない恋愛展開はもちろん破天荒なifルートも満載で、ファンならば楽しんでプレイできるだろう。
プレイヤーはオーソドックスなアドベンチャーパートを経て、「ツーショット会話システム」へと進む。京介に対する言葉に反応を返すか返さないかを選択するのだが、ここでLive2Dが採用されており、目の前のキャラクターの表情やポーズが滑らかに動く様子を見ることができる。名付けて「O. I. U.システム」(俺の妹がこんなに動くわけがないシステム)だ。我々現実の人間も目の前の人と会話するときは、微動だにしないということはなく多少なりとも体が動いてしまうが、そのようにごく自然な幅の動きで表現してくれる。
当時は2Dグラフィックからアニメーションを自動生成する技術が研究されていた。『俺の妹ポータブル』以前ではソニーが開発した「モーションポートレート」が、同じくバンダイナムコのラノベ原作作品『涼宮ハルヒの約束』(2007年)と『とらドラ・ポータブル!』(2009年)で使用されており、キャラクターの顔を細かく動かしていた。しかしLive2Dは全身の制御により特化しており、キャラクターデザインの魅力と可能性を引き出すことを志向しているという点で、従来の技術とは違うものだった。
Live2Dを開発したサイバーノイズ(当時の社名。現在はツール名と同じLive2D)は当初経営危機に直面していたが、『俺の妹ポータブル』に採用されたことがきっかけで認知度が上がったとインタビューで明かされている*1。
また、純粋なアドベンチャーゲームとしても工夫がある。ツーショット会話の結果、ストーリーが悪い方向に進みそうな場合は続けて「緊急回避システム」に突入することがある。これで攻略したいキャラクターの機嫌を保てるように方向修正を行えるのだが(スルーすることも可能)、アドベンチャーゲームの選択肢は基本的にその場限りの一発勝負である事を考えると、なかなか珍しいシステムだろう。
そしてO. I. U.システム自体にキャラクター攻略のヒントが隠されている。
二見*2 あと、ツッコミをする前のタイミングで、ヒロインの表情が微妙に変わるんですよ。こう、微妙に視線をそらしたりとか、ツッコんでほしいときはそういう表情をします。
池嵜*3 言葉ではキツいことを言ってるんだけど、本当は話をふくらませてほしいよ……っていうときには、目線をそらしながらチラチラこっちを見るようになってます(笑)――「主要スタッフぶっちゃけ座談会」『俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル ザ・コンプリートガイド』P126
このようにLive2Dという新技術で魅せるばかりでなく、それを活用しての新機軸と言えるコミュニケーションをも実現していたのだ。
人気を得たことで続編の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブルが続くわけがない』(2012年)もリリースされ、こちらも好評を博した。ライトノベル原作のアドベンチャーゲームの中でも相当の秀作であることは間違いないだろう。
【参考文献】
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル ザ・コンプリートガイド』(アスキー・メディアワークス、2011年)
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*1:【特集】「Live2D」を救ったのは『俺妹』!?誕生のきっかけや話題の「FaceRig」に迫る | インサイド
https://www.inside-games.jp/article/2016/02/06/95717.html
*2:二見鷹介氏。本作のプロデューサー。
*3:池嵜将也氏。本作の企画・原案者。
