※以下、画像はNintendo Switch版『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 コレクション』(2026年、ジー・モード)
発売元:元気
初出:2002年
1990年代後半から、世界中の人々の間に爆発的な勢いで普及した携帯電話。これには本来の電話機能だけでなくアプリケーション、とりわけゲームが数多搭載されていった。
スマートフォン以前の、現在はフィーチャーフォン*1と呼称されている携帯電話は、コンソール機に比べれば圧倒的に容量や機能面の制限があり、そもそもゲームに特化したデバイスではないため操作性も良好とは言えない。だからこそゲームクリエイターたちはこの新しいプラットフォーム上で可能なことを突き詰めていった。推理アドベンチャーゲーム『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズもそのような作品のひとつだった。
主人公の
2002年の『Vol.1 仮面幻想殺人事件』から2011年の『Vol.20 月条邸事件』までリリースされ、番外編も含めれば20作以上もの作品が生まれている。フィーチャーフォンのアドベンチャーゲームは、既存作の移植であれば『ポートピア連続殺人事件』や『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』などが2001年には登場していた*2。しかしオリジナルで勝負しようという作品は、まさにこの癸生川シリーズが最初期の事例だった。本シリーズが誕生した理由については原作者の石山貴也氏が生王名義で、冒頭の事情を踏まえて「アドベンチャーゲームなら携帯電話でも楽しめるんじゃないか」と語っている*3。
ルックだけならファミコンライクだが、高難易度の作品が多かった1980年代とは違い、コマンド数が少なく平易に作られているのが特徴。一作一作はコンパクトだが、それだけにストーリーは無駄なく切れ味鋭く展開されていく。小さな画面ゆえにある程度緩和されているが、凄惨な描写も多く想像力を喚起させるだろう。
ストーリーは生王と事務所助手の
タイトルにもある癸生川探偵本人はあまり登場しないのだが、その奇矯な振る舞いが抜群に印象に残る。伊綱も優秀な助手だが、癸生川は常人を超えた能力の持ち主であり、終盤で颯爽と登場し事件を解決していく……というのがパターンのひとつ。最初こそ変人と感じてしまうが、次第に「この男が出てくれば安心」という不思議な気分にさせられるのだ。ビデオゲームの探偵はそれまで神宮寺三郎や黒須剣のような個性派が生み出されていたが、癸生川凌介も間違いなく彼らと並ぶ名物探偵キャラクターのひとりである。
足かけ約10年、フィーチャーフォンの普及期から衰退期までを駆け抜けた人気シリーズだったが、スマートフォン時代に移行するとプレイするのは難しくなっていた。
しかし現在、ジー・モードが過去のフィーチャーフォンアプリゲームを復刻するプロジェクト「G-MODEアーカイブス」を進めている。『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズもこのラインナップに加わっており、当時の雰囲気そのままに現行機でプレイできるようになったのは喜ばしい。
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*1:日本のフィーチャーフォンは世界の諸製品に比べて多機能化が著しく、ガラパゴス的に独自進化したことから「ガラケー」とも呼ばれる。
*2:エニックス、堀井雄二氏作のADV「オホーツクに消ゆ」などをiアプリ化 「未解決事件ファイル」を10月15日より配信開始
https://game.watch.impress.co.jp/docs/20011015/enix.htm
*3:生王正生の「事件の裏側」:第2回 癸生川シリーズが生み出された理由https://web.archive.org/web/20080927024114/http://genkimobile.jp/topics/column01/history/002.html
