※画像は動作確認版
本記事は2010年代に公開していた自サイト記事の、微調整の上での再掲となる。
プロの小説家が諸事情あって同人ノベルゲーム化したという作品。
そのダークな世界に触れてみたい方はぜひ。
小説家の唐辺葉介*1氏が、スクウェア・エニックスから出版予定だったが諸事情あって発売中止になった作品をデジタルノベル化したという、いろいろな意味で話題となった作品。プロ作家の同人ゲームへのアプローチとしてこういうケースもあるのかという感慨が湧いた。同じ経験をしたことのある作家がいるなら、 ぜひ続いてほしいと思う。
物語は少年が暗い部屋の中から助け出されるシーンから始まる。彼のすぐそばでは、死んだ母親が横たわっている。入院生活を経て少年は伯母に引き取られることになるのだが……。もともとが小説ということもあるが、これぞプロという情景描写の濃密さには誰もが素晴らしいと感嘆するだろう。メッセージの読み進め方がいささか変わっていることも特徴だ。普通はページごとに区切るのだが、 小分けにしたメッセージが下からせり出してくるような形となっている。何気に、新しい見せ方なのではと思った。そしてゆらゆら揺らめくキャラのシルエットが不気味さを増す。
発売中止の理由が「社内の倫理規定に抵触した」らしく*2、いったいどのようなインモラルな展開がなされるのだろうと期待していたが、なるほどこれじゃスクエニからは出せないなというシーンがちらほら(わりとあっさり流されるが)。しかしこの作品の肝はそういったシーン自体ではなく、少しずつ変容していってしまう伯母一家の姿。彼女たちがもともと抱えていた問題が、じわじわと傷が沁みるように表面化していき、見ている側も痛くなる。複数の視点から語られる物語はあくまでも冷徹で、そのままエンディングまで至る。実に手加減なしで憂鬱にさせようとしており、プレイ後はモヤモヤが抑えられない。暗い部屋というのは登場人物たちの人生まるごとを指しているのではと思ってしまう。
むやみにボリュームを増やしているわけではなく、数時間程度で読み終えられる。エンターテインメントというにはダークすぎるのだが、だからこそ同人で出すにふさわしいとも言えそうだ。そういうのを読みたいんだという人にはおすすめ。
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本作は現在でもパッケージ版が通信販売されている。Windows 11でも動作確認済みだ。
*1:『SWAN SONG』『Black Sheep Town』等を手がけたゲームシナリオライター瀬戸口廉也氏の別ペンネーム。
*2:唐辺葉介「暗い部屋」が発売中止。ガンガンONLINEにお詫び :にゅーあきばどっとこむ
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