アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

『EVE The Lost One』のライターが前作未プレイというのは本当か

 インターネット上の情報を鵜呑みにしてはならない――これは多くの人が認識していることだと思う。
 ビデオゲーム業界にも真偽の不確かな情報が日常的に蔓延しており、Wikipedia等の記述に対して開発に携わったスタッフ本人が指摘を入れるという光景もしばしば見られる。

 今回私が気になったのは『EVE The Lost One』に関する情報だ。
 マルチサイトアドベンチャーゲームの名作『EVE burst error』(姫屋ソフト/シーズウェア、PC98、1995年)の続編としてリリースされたのが『EVE The Lost One』(イマジニア、SS、1998年)である。
 この作品の原作・脚本を務めたのは山田桜丸氏。ライトノベル作家としてデビューし、のちに一般文芸に進出、直木賞を受賞した桜庭一樹氏のライター時代の名義として知られる。

『EVE The Lost One』(イマジニア、SS、1998年)

 この山田氏に対する不名誉な噂が、以前からネット上によく見られる。
 いわく、山田桜丸は前作(EVE burst error)をプレイせずにシナリオを書いたというものだ。

 しかし私が先日取り寄せた書籍『EVE The Lost One ワールドガイダンス』には、これとは正反対の記述が見られる。

 

 まず前提を整理すると、『EVE The Lost One』は――

  1. イマジニアから出された『EVE burst error』セガサターン版に続くオリジナル作品として企画された
  2. 企画者はプランニンググループ「ホロン」のCROSS氏。イマジニアの広報と仲良くなった縁で企画を依頼された
  3. 山田氏はCROSS氏の知り合いだった縁で原作を依頼された

 そして山田氏は『ワールドガイダンス』のインタビューに、スタッフの一員として次のように発言している。

山田 一週間で、ゲームをやって、プロットと物語も作りました。
(...)
――山田さんは、CRさんから話を聞いてから動き始めたんですか?
山田 そうです。それで、最初の3日間で前作をやって……セーブで失敗しちゃったんですけど(笑)。それで大筋を掴んで、あとは(前作の)ここは使えるとか、ストーリー的にこういうパターンも考えられるとか、そういう話をしながら物語を考えていったという感じです。


――「スタッフインタビュー」『EVE The Lost One ワールドガイダンス』P92-93
※強調は筆者

 これがなぜ「前作をプレイせずにシナリオを書いた」となってしまったのか。
 実はCROSS氏がこうも発言している。

CR オレは、その一週間の中では前作をやらなかったんですね。企画段階では、あえて見なかったんです。前作の良いところは聞いていたんで、そこだけイメージを膨らませて、それを自分ではどうアレンジできるのかということを考えたわけです。前作をやってしまうと、前作の作者の考えがそのまま注入されてしまうんで、注入される前に企画を作っちゃおうと。それで企画が通ったあとに、ディテールの部分を研究しようと、じっくりやったわけです。

――同書 P93
※強調は筆者

 おそらくだが、この記述が取り違えられてしまったのではないだろうか。しかし企画段階ではあえて触れなかったというCROSS氏も、企画が正式にGOとなったらじっくりプレイしたという。
 スタッフの中に、前作をプレイしなかった人などひとりもいなかったのだ。しかしEVEシリーズファンの間では、間違った確定情報として流布してしまった……。

 

 私としては今回取り上げたインタビューを、もっとも信頼できそうな一次情報として提示したいが、いかがだろうか。
「いや、山田氏が前作をプレイしていないというはっきりした発言がこの書籍にある」
 などの情報がもしあれば、ご教授いただければ幸いだ。

【参考文献】
『EVE The Lost One ワールドガイダンス』(ソフトバンク、1998年)

イブ・ザ・ロストワン ワールドガイダンス