アライコウのノベルゲーム研究所

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『白銀の守護者よ、ナラを冠せよ 十二年の禁欲』レビュー:インド神話を元にした快作ファンタジー

白銀の守護者よ、ナラを冠せよ 十二年の禁欲』(クロチカ、PC、2018年)

 

 本記事は2018年に公開していた旧ブログ記事の、微調整の上での再掲となる。
 インド神話は日本のフィクションにも大きな影響を与えている。
 しかしそれそのものを翻案したノベルゲームというのは珍しいだろう。

 


 

 クロチカの『白銀の守護者よ、ナラを冠せよ 十二年の禁欲』
 古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』における英雄・アルジュナを主人公とした、神話冒険ファンタジーノベルゲームだ。原典そのままではなく、作者独自の脚色・改変が多く含まれている(そもそも原典自体に多様なバージョンがある)。

 アルジュナは古代の英雄が活躍するタイプのゲーム作品にしばしば登場するキャラクターだが、彼の物語をちゃんと知っている人はさほど多くはないと思われる。かくいう私もさっぱり知らなかった。
 世界各国の神話・叙事詩というものは、エンターテインメントとしても教養としても優れたもののはずだ。なのでなるべく多く知りたいと思っているのだが、このようにノベルゲームとしてとっつきやすい形でリリースしてくれたのは、ありがたいことだと思う。

アルジュナの登場

 第1話「ガンガーのウルーピー」は、旅の途中のアルジュナが盗賊に襲撃されるというオープニングから始まる。これがめっぽう面白い。「弓の使い方がなっていません!」とその弓を奪い取って矢を放ち、盛大な爆撃。これぞ神話クオリティというべきぶっとび具合だ。
 アルジュナを含む五兄弟には共通の妻がいるのだが、兄弟の誰かと妻が一緒にいるとき、他の兄弟はふたりを邪魔してはならない――いろいろあってアルジュナはその決まりを破って国を追放される。驚くほど愉快な流れだが、おおむね原典どおりだという。

 さて、ウルーピーというのはアルジュナが生涯に持った4人の妻のひとりで、ナーガである。竜の姫――要するにヘビ女なのだが、これがまた可愛い。昨今人気のモンスター娘も、さかのぼればこのような神話に行き当たるわけだ。昔の人の想像力はつくづく素晴らしいと思う。
 ウルーピーは最初、現代風で思い込みの激しいコミカルな女に描かれているのだが、これも原点からしてそんな感じらしい。彼女にまつわる物語が明らかになると、その可愛さが五割増しになった。それからの彼女を想うアルジュナの行動がまた、ひたすらカッコいいのだ。

 テキスト、グラフィック演出、音楽演出、いずれも文句なしの快作。何より強く優しいアルジュナのキャラクターが抜群だ。なるほど英雄とはこういう男のことをいうのだと再認識させられる。
 全4話が予定されており、現在は第2話までの公開。続きが非常に待ち遠しい。

© クロチカ