アライコウのノベルゲーム研究所

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国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第87回『ghostpia』

ghostpia』(超水道、スマートフォン、2014年)
※画像はiOS版

発売元:超水道、room6
初出:2014年

 サークル超水道は2011年にスマートフォン向けアプリ『森川空のルール』でデビューした。電子書籍というものが徐々に普及しだした時期だったが、それらとは一味違う、ノベルゲームエンジンを用いた「デンシノベル」――つまりは選択肢なしノベルゲームと呼べる作品を、以降も彼らは一貫してリリースし続けている。商業の空気に左右されないその創作スタンスは、多くのファンを獲得するに至った。
 そんな彼らの現在の代表作と言えるのが、Steam版やNintendo Switch版もリリースされている『ghostpia』だ。本連載では初めて取り上げる選択肢なしノベルゲームである。

主人公の小夜子と幽霊の町の住人たち

 舞台は雪に閉ざされた幽霊の町。少し内気だが行動力のある少女・小夜子は、ある日新入りの幽霊ヨルと出会う。周りには他にも個性的な人物がたくさんで、誰もが一筋縄ではいかない連中ばかり。そんな町の中で、孤独だった小夜子の人間関係は徐々に変化を見せていく……。
 ゴースト+ユートピア、このタイトルに反してホラー表現はない。しかしいくらかのショッキングな表現があり、IARCレーティングは「16+」となっているので、小中学生がプレイする場合は注意が必要。

 第一の見どころは絵本のようなビジュアル表現だ。その絵柄は美しくも温かみがあり、なおかつ量が膨大。ノベルゲームでは一般的な立ち絵が存在せず、法則性なく多様な形式のグラフィックが縦横に挿入される。公式には「デンシ・グラフィックノベル」を標榜しているが、超水道が培ってきた技術の集大成という趣だ。
 いわゆるゲーム性を完全排除した選択肢なしノベルゲームは、おのずと画像演出が重要なファクターになってくる。本作は「読む映画」とも称しているが、目まぐるしく画面が変化していく様は、なるほどそう名乗るにふさわしい。

時にはハードなシーンも

 ストーリーは多少の言葉ではなかなか言い表せない。ミステリアスでファンタジックでアグレッシブでドラマティック。アートが千変万化する中、幽霊たちが織り成すシーンの数々が、ツギハギのようでしっかりまとまりながら繰り広げられる。画像演出だけに頼らず、あくまでもノベルということを重視しているのも特筆される。地の文と台詞に独特の叙情とリズム、そして密度があり、読むのが楽しい。シナリオライターのミタヒツヒト氏は、その筆力を買われて商業作家デビューも果たしている。
 実は町の外からやってきた異邦人である小夜子には、あるかもわからない故郷に帰りたいという目標がある。しかし全体のストーリーはもちろん、それ以上にインパクトあふれるシーンの瞬間瞬間や、卓越した会話劇を賞味するのが良いように思われる。実に希有な作風なのだ。

 スマートフォン版は現在も無料でプレイできるが、Steam版とNintendo Switch版は各種要素や演出が強化されており、またエピソードを追加した上で全体の前半を収録したシーズンワンとしている。続きのシーズンツーもこちらでのリリースが予定されているので、特別な理由がなければこのいずれかを選ぶのが良いだろう。豊富なビジュアルと演出を駆使し、テキストそのものも味わい深い。選択肢なしノベルゲームとしてはひとつの頂点に到達した、そんな感慨を抱かせる見事な労作に仕上がっている。

© 超水道