アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第88回『レイジングループ』

レイジングループ』(コトブキソリューション/ケムコ、スマートフォン、2015年)
※画像はiOS版

発売元:コトブキソリューション/ケムコ
初出:2015年

 アメリカ発祥のパーティーゲーム『汝は人狼なりや?(人狼ゲーム)』。参加プレイヤーは村人と村人になりすました人狼に分かれ、互いの正体を会話と推理によって探り合う。すべての人狼を処刑すれば村人チームが、生き残った人狼と同数まで村人を減らせば人狼チームの勝ち――おおまかにはこのようなルールがある。
 人狼ゲームは日本国内においても2010年代前半には知られるようになり、様々な派生版も生まれて人気を博すようになった。これをノベルゲーム形式に落とし込み、人狼ブームも手伝って評価を得たのが『レイジングループ』*1

 バイク旅行者の青年・房石陽明ふさいしはるあきは事故がきっかけで限界集落の休水やすみずに迷い込む。そこは霧が出た時に「黄泉忌みの宴」という殺人儀式が行われる、妖しげな因習と信仰に囚われた土地だった。陽明はわけもわからないうちに凄惨な死を迎えてしまうが、彼には死んでも時を戻るループの力を所持していることが判明する……。

死に戻りを繰り返して先へと進む

 タイトルにもあるように本作はループ系の作品だ。陽明は物語の中で幾度となく、様々な形の死に見舞われてしまうが、これを回避する術はない。ゲーム中には随所に選択肢が用意されているのだが、一方がロックされていることが多い。やむなくもう一方の選択肢を選ぶしかないが、バッドエンド直行となる。
 一度バッドエンドに至ることでKEY(鍵)を入手し、陽明は次のループで再びその選択肢に突入、今度はロックされていた選択肢が解除されているので、そちらを選んで先に進んでいく。そしてまたどこかで死んではKEYを手に入れる――この繰り返しにより陽明のループ能力を表現している。実質一本道とも言えるのだがそうとは感じさせない、『レイジングループ』特有のゲームデザインだ。バッドエンド時のヒント「行き詰まったら死んでみろ」には大きなインパクトがある。

はたして誰が「くくられる」のか

 しかし最大のインパクトはストーリーそれ自体だ。基本的には和やかなパーティーゲームである人狼を、因習を組み合わせた和風ホラーサスペンスノベルにする――このコンセプトは新鮮でありながら横溝正史的な伝統と安定も合わせ持ち、多くのプレイヤーを虜にすることになった。権謀術数と疑心暗鬼の渦巻く宴、その末に崩壊していく人間関係、また初出が規制の厳しいスマートフォンだったため直接的なグラフィックはないが、猟奇描写の数々がプレイヤーに常に多大な緊張を与える。
 これらにさらなる説得力をもたらしたのが、人狼ゲームそのものの見直しだ。ルールの背景など本来ならば深く考えなくても差し支えないものだったが、ゲームのストーリーに沿うように様々な理由付けをしていった。シナリオライターでありディレクターも務めたamphibian氏の最大の仕事はこの点である。

「なぜ、おおかみは1晩に1人しか殺せないのか」「なぜ、ルールに背いたらいけないのか」「証拠を集めて科学捜査しないのか」という部分をおろそかにしながら、作劇装置としての人狼ゲームを楽しまれているのが納得いかず、そこを全部埋めたいと、ずっと考えていました。


――「インタビュー amphibian」『レイジングループ 完全読本』P96

 舞台となる集落の起源など、地理や歴史から設定資料を作り込み、それらをあくまでもストーリーのダイナミズムの中でバランス良く開陳していく。幾度ものループの末にメインヒロインの驚愕の真実、主人公の想定外のキャラクター性を明かしていく。トリックで実現可能な人為的事件と超常現象の巧みなミックス。そして最後の神話の解体――すべてが流れるように見事な手腕で、おそらくは人狼ブームがなくともヒットを記録したのではないかと感じさせる。

 1980年代からアドベンチャーゲームを作っていたケムコだったが、本作はまぎれもない現在の代表作で、名だたる作家・ノベルゲームクリエイターたちも激賞している*2。『STEINS;GATE』などと並び、2010年代のループものの重要作品のひとつに位置づけられるだろう。

【参考文献】
『レイジングループ 完全読本』(ホビージャパン、2018年)

© KEMCO

*1:ケムコはこれ以前にも人狼ゲームをベースにしたデスゲーム作品『鈍色のバタフライ』(2010年)をリリースしている。『レイジングループ』はより人狼らしさを強化した形である。

*2:星海社の小説版の刊行時に、奈須きのこ、虚淵玄、小高和剛、日向夏、イシイジロウ、芝村裕吏、竜騎士07の各氏が解説文を寄せた。