発売元:ディースリー・パブリッシャー
初出:2015年
オープンワールド。一本道ではないマップをシームレスに移動し、自らの意思でルートや目的を決定できる――主にそのように定義されているゲームデザインだ。探索や冒険ものでその魅力を強く味わえるもので、本連載では『FOREVER BLUE 海の呼び声』が該当する。
そのオープンワールドを恋愛アドベンチャーゲームで楽しませたい。そんなユニークな発想のもとで生まれたのが『夏色ハイスクル★青春白書』だ。正式名称は『夏色ハイスクル★青春白書 〜転校初日のオレが幼馴染と再会したら報道部員にされていて激写少年の日々はスクープ大連発でイガイとモテモテなのに何故かマイメモリーはパンツ写真ばっかりという現実と向き合いながら考えるひと夏の島の学園生活と赤裸々な恋の行方。〜』。現在、日本一長いタイトルのビデオゲームと言われている。
日本のどこかにある小さな島「夢ヶ島」に転校生として訪れた主人公。幼馴染と予期せぬ再会をしたかと思えば、廃部の危機にある報道部に強制入部させられてしまう。すでに決まっている次の転校までの3ヶ月間、主人公はどのように過ごしていくのだろうか……。
移動はスティック操作で行い、校内だけでなく島全体を行き来できる。至るところにキャラクターが立っていたり歩いていたりするので、ぶつからないように気をつけなければならない(好感度が下がってしまう)。小さな島という設定だがプレイヤーの行動範囲はかなり広く、またリゾート的な雰囲気も手伝って、とても魅力的なオープンワールドになっている。
メインは報道部での取材活動で、これによりヒロインたちと交流し、やがて恋愛関係に発展させるのが目的となる。しかしこれをまったく無視して別のイベントやクエストに挑戦することも可能だ。クラスメイトとの友情を育んだり、バイトに明け暮れたり、釣りを楽しんだり、写真を撮影して回ったり……とにかく可能なことが多い。個別エンディングこそないものの、ヒロイン以外のサブキャラとのデートも用意されているのは驚かされる。
そして本作の最大の特徴とも言えるのが、長いサブタイトルの中にあるように、パンツ写真を撮影できることだ。主人公は歩く、走る以外にもしゃがむ、スライディング、ほふく前進、仰向け移動といったアクションが可能で、目的の女生徒がいればいつでもシャッターチャンスを狙える。しかし考えもなしにやっていては「不審者ゲージ」が溜まって指導や補導の対象となり、累積すると停学処分となる。
パンツの種類は計100種もあり、柄が毎日ランダムで変わるなど、清々しいほどのお遊び要素だが、結果的に他ではそう見られないユニークポイントに昇華されている。
PRとしては何も話題にならないのが一番怖いのですが、そういう意味では少し過剰気味でも話題にしていただいていることにひと安心しています。
――「スタッフインタビュー」『夏色ハイスクル★青春白書(略) オフィシャルコンプリートガイド』P174
ディースリー・パブリッシャーの製作プロデューサー岡島信幸氏もユーザーにこのようなメッセージを寄せている。シナリオ面もよく作り込まれているのだが、本作が第一に言及されるのはやはりパンツ。しかしゲームは内容以前に、まずユーザーに手に取ってもらわなければ始まらない。話題作りに関しては大成功を収めたと言えるだろう。ポリティカル・コレクトネスの観点から令和の世では難しい要素でもあり、もはや真似のできそうにない戦略でもある。
発売から10年以上経つが類似作はなかなか見当たらず、オープンワールド恋愛アドベンチャーというジャンルのパイオニアにして代表格だろう。高い自由度ゆえに難易度も高めだが、個性的な作品を求める人にはこの上なく最適だ。
© D3 PUBLISHER
【参考文献】
『夏色ハイスクル★青春白書(略) オフィシャルコンプリートガイド』(KADOKAWA、2015年)
