アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第92回『十三機兵防衛圏』

十三機兵防衛圏』(アトラス、PS4、2019年)

発売元:アトラス
初出:2019年

 突如街中に飛来した、大型の未確認物体。テレビキャスターが日常の終焉を告げ、人々が逃げ惑う中、この脅威に立ち向かおうとする13人の少年少女たちがいた。彼らは巨大ロボット「機兵」に乗り込み、人類の存亡を懸けた最終決戦に臨む……。
 そんなロボットものの定番めいたオープニングで幕を開ける『十三機兵防衛圏』は、アクションRPGで定評のあるヴァニラウェアが開発し、老舗メーカーのアトラスが発売した。そしてその精緻なシナリオ構造が、アドベンチャーゲームファンのみならず同業者たちをも驚愕せしめることになった。

機兵に乗り込み怪獣を迎撃する

 本作は3つのパートで構成される。13人のメインキャラクターそれぞれの物語を進める「追想編」、機兵を操作し襲い来る怪獣と戦うシミュレーションバトルの「崩壊編」、明らかになった事項をアーカイブで確認し物語を考察できる「究明編」だ。
 バトルはリアルタイムストラテジーで、刻一刻と状況が変化する中、拠点となるターミナルを落とされないよう迫る怪獣に対処していく。多彩な武器で攻撃し、画面全体にエフェクトが散らばる様は爽快。難易度は元々低めで、さらに難易度を楽にできるカジュアルモードもある。このパートがどうしてもクリアできないという事態にはならないだろう。この手のゲームはほとんどプレイしないという人でも安心だ。

キャラクターを自由に選びストーリーを進める

 ストーリーは13人の視点からなる群像劇スタイルを採用しており、誰からプレイしても差し支えない。横スクロールで移動しながらキャラクターと話したり、各所を調べたりする。会話はメッセージウィンドウを用いず、非常に短くシンプルなのが特徴。美しいアートを極力邪魔しないように考慮されているのが好ましい。
 群像劇と言えば『街 〜運命の交差点〜』や『428 封鎖された渋谷で』だが、本作は同一時間帯ではなく異なる時代を舞台とし、彼らはしばしば時空を行き来もする。13人それぞれのストーリーを少しずつ解放していきながら、作中に秘められた謎、そして歴史を解き明かしていく……その構造は必然的に複雑さを極め、クリエイター本人たちも開発には非常に苦心した。ヴァニラウェア代表の神谷盛治氏は次のように語る。

どの主人公の視点からも謎は一部しか解明されません。ゆえに誰から進めてもいい、というものを目指したのですが、めまいがするほど難しかったですね。

――「開発陣発言集①」『十三機兵防衛圏 公式保存記録:Double Helix』P291

『428』についてシナリオ構造を「複数の細い川が下流に進むに従い、一本の太い川として合流するイメージ」と述べたが、『十三機兵防衛圏』の場合、それらの川が上にも下にも、何本も存在するという具合なのだ。しかもその流れは時に逆流さえする。ゲームクリエイターの桜井政博氏は「三次元的なシナリオ運び」と発売間もない頃から絶賛している*1
 上下左右、幾重もの川の流れはいかに収束するのか。SFらしく壮大な、それでいて一種の古典的な愛、人間賛歌だ。筆者個人のことを言うと、その複雑なストーリー展開は理解が追いつかないことも多かったのだが、最終決戦後のラストシーンには胸が震えた。彼らはこのために長い旅を続けていたのだと。確かに難解ではあるが、根底にあるのは非常にシンプルなテーマだった。未プレイの人も、そのことさえ抑えておけばきっと先に期待しながらプレイできるだろう。

 優れたSF作品に送られる星雲賞のメディア部門において参考候補作に選ばれるなど*2、SF愛好家にも高い評価を獲得した。全世界累計販売本数は100万本を突破しており、現代国産SFアドベンチャーゲームの新たな代表作に数えてもよいだろう。

© ATLUS
© SEGA All rights reserved.

【参考文献】
『十三機兵防衛圏 公式保存記録:Double Helix』(KADOKAWA、2020年)

*1:X:アトラス公式アカウントのポストより。
https://x.com/Atlus_jp/status/1215131642223742976

*2:ビデオゲーム作品がこれに選出されるだけでも珍しく、受賞例は2001年の『高機動幻想ガンパレード・マーチ』(ソニー・コンピュータエンタテインメント)のみ。