アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第93回『星の欠片の物語』

星の欠片の物語、ひとかけら版』(メディアスケープ、2018年)
※画像はPSVR版

発売元:自転車創業、メディアスケープ、フォージビジョン
初出:2018年

 VRゲームの発展は、2010年代後半におけるビデオゲーム最大のトピックのひとつだ。Oculus Rift、PlayStation VR、HTC Viveといったヘッドマウントディスプレイを用いて、世界中の一般消費者が比較的手軽に仮想現実空間を楽しめるようになった。
 このVRゲームに主に求められるのは、臨場感あふれるアクションゲームやシューティングゲームやRPGだろう。しかし中にはノベル・アドベンチャーゲームも存在し、国内における代表作としてまずは『星の欠片の物語』が挙げられる。企画・ゲームデザインは自転車創業。2000年代初頭から独創的な作品を送り出してきたことで知られている。


上下左右、360度見渡せるステージ

 ゲームを起動すると、星の欠片にひとりの少女が取り残されている。プレイヤーが別の世界を覗き見ることができる装置――すなわちVRシステムを装着しており、互いを認識していると知った少女は、力を合わせて謎を解き、砕けた星からの脱出を目指そうと持ちかけてくるのだった……。
 プレイヤーは視界に飛び込んでくる背景を、上下左右、360度見渡すことができる。従来の平面ディスプレイを用いたゲームでも、マウスやコントローラー操作で背景を動かすことは可能だった。しかし実際に自分の体を動かして後ろを向く、地面から空を見上げる、高所から地面を見下ろすといった動作は、まさしくVRならでは。これが探索という行いの根源的な面白さに繋がっており、第一の美点だ。

視線でフォーカスしたものを少女に調べてもらう

 そしてゲームデザインはさらにユニーク。プレイヤーは少女のいる世界に直接干渉できないが、VRシステムを通じて視線で目標物をフォーカスし、少女に調査を代行してもらう。言わばポイント&クリックの発展系だが、目標物はそのあたりに設置されているもの、遠くにある別の星、さらには間近にいる少女自身が抱えているものなど様々で、プレイヤーは近・中・遠距離を意識的に見分けることが必要になる。
 視線で指示することでしか少女に動いてもらえないというのは、実のところもどかしい。しかしこれには必然性がある。元よりプレイヤーと少女の間には次元の壁が存在し、コンタクトできているだけでも奇跡的。見ることしかできないプレイヤーの代わりに少女に動いてもらうというのは、そのもどかしさをゲームデザインに落とし込んでいる形なのだ。

 謎解きの難易度は、そう高くはないが決して易しくもない。コマンド選択やマウスクリックと違って高速で試行錯誤できないこともあるが、プレイヤーの死角を突く謎解きが少なくないのだ。さんざん迷った挙げ句、ふと体勢を少し変えて注意深く見てみると――ああ、そこを調べればよかったのか! と感心させられたことが筆者も何度もあった。頭脳と身体を協力させて答えを見つける、これもやはりVRでしか味わえない体験である。

 アドベンチャーゲームの方法論にまたひとつ新規性を導入した、掛け値なしの良作だ。プロローグ版としてのエンドがある「ひとかけら版」、完結版としてのエンドがある「しかけ版」の2種類が用意されており、現在はOculus Rift以外でひとかけら版が無料になっているので、まずはこちらをプレイしてみるのがよいだろう。

© Jitensyasougyou Inc. / Developed by ForgeVision, Inc. / Licensed to and published by Mediascape Co. Ltd.

星の欠片の物語。しかけ版