※画像はPSVR版
発売元:MyDearest、Sekai Project
初出:2019年
VRの探索アドベンチャーゲームは『星の欠片の物語』が最良の方向性を示した。それでは純然たるビジュアルノベルタイプではどうか? その問いに答えたのが『東京クロノス』と言えるだろう。開発元のMyDearestは創業当初からVRに特化した企業だったが、本作により一躍知名度を高めることになった。
主人公は気がつけば、時が止まった誰もいない渋谷「クロノス世界」に閉じ込められていた。同じ状況に陥っていた7人の幼馴染たちと合流するも、突如大型ビジョンに血のような赤い色のメッセージが映し出される。
「私は死んだ。犯人は誰?」
この世界からの脱出方法はひとつだけ。不可思議な現象を起こしている犯人を見つけ出し、殺すこと――
ビジュアルノベルは一般的に、主人公と同一の視点でプレイするという特性がある。従来の作品は平面ディスプレイ越しにそれを行っていた。つまり同一の視点とはいえ、実際には物理的な距離感があった。しかしヘッドマウントディスプレイを用いる本作は、作品世界に実際に入り込み、主人公と従来以上の同一化を果たしている感覚を起こさせる。
ビジュアルノベルの世界に入ってみたいというのは、このジャンルのプレイヤーたちが一度は思ったことがあるだろう願望だ。それを可能なかぎり実現していることに、まず第一の価値がある。たとえば女の子に寄り添われるシーンには新鮮な驚きがあり、VRビジュアルノベルの大きな可能性を示すものだ。またサイズが固定される平面ディスプレイでは、その場に多くのキャラクターがいても同時に表示させることには限界がある。しかし360度の視野を持てる本作は、彼ら全員を自然なポジションで表示させることが可能になっているのだ。
ストーリーは奇をてらってはいない。共に事件の解決を目指そうとする幼馴染たちが、ひとりずつ消失していく。そして誰も覚えのない9人目の幼馴染の存在――ミステリーとしてはきわめてオーソドックスな構成だ。しかもプレイヤーが何かしら推理する必要はなく、たまに出現する選択肢を選んでいくだけで物語は進む。選択肢はすべて2択でどちらかがバッドエンドという単純なもの。1周目で大筋が明らかになったら解決編である2周目に進むという具合だ。
グラフィックの見せ方はVRならではの特性があるにせよ、これならば従来の平面ディスプレイで読んでも事足りるのではないか? 筆者も当初はこれを懸念していた。しかしそれは杞憂だった。たった一箇所ではあるのだが、とある選択肢において、VRでしか為し得ないだろう演出があったのだ。これを体験できて非常に満足だったし、同じノベルゲームクリエイターとしても「やられた!」と正直に思ってしまった。
枠組みはミステリーだが青春要素も強く、事件解決後の読後感は爽やか。SteamのVRソフトランキングで1位を獲得するなど世界的な評価も得ており、VRビジュアルノベルというジャンルを考える際に標準となる作品だ。
なお非VRとなるが、続編の『アルトデウス: ビヨンドクロノス』とパックになったNintendo Switch版も発売されている。どうしてもVR機器を揃える余裕がない人はこちらを選択するといいだろう。
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