アライコウのノベルゲーム研究所

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国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第97回『AI: ソムニウム ファイル』

『AI: ソムニウム ファイル』(スパイク・チュンソフト、Switch、2019年)

発売元:スパイク・チュンソフト
初出:2019年

 警察ものの作品において、数多のバディがこれまで誕生してきた。それらの作品に求められるのは、何よりも高度なシナリオとキャラクターであるのは間違いない。しかしビデオゲームであるならば加えて、作品世界に合致するグラフィックと多彩な演出が求められるだろう。『AI: ソムニウム ファイル』はそんな要求に見事応える秀作だ。シナリオ&ディレクションは『Ever17 -the out of infinity-』や『極限脱出』シリーズなどの打越鋼太郎氏が手がけている。

事件を捜査する伊達と相棒のアイボゥ

 警視庁特殊捜査班・先進式人脳捜査部隊「ABIS (アビス)」に所属する伊達鍵(だてかなめ)は、一報を受けて廃墟と化した遊園地に赴く。発見されたのは左目をくり抜かれた女性、伊達の知人の遺体だった。彼は事件を解決すべく義眼型AIのアイボゥとともに捜査に乗り出すが、これは凄惨な連続殺人の幕開けに過ぎなかった……。
 まずプレイヤーは捜査と推理をしながら物語を追う「捜査パート」を進めていく。気になる箇所をポイント&クリックで調べていき、時にはアイボゥによるズーム機能やX線機能を駆使する。このパートは基本的に難しいところはない。なおレーティングが国産アドベンチャーゲームとしては例の少ないCERO:Z(18才以上のみ対象)で、猟奇的描写が頻発する点は注意されたい。しかしアイボゥとの掛け合いが愉快で、その凄惨さをいくらか和らげてくれるのが好ましいところ。

夢世界を探索するソムニウムパート

 そして重要参考人の夢の中で手がかりを探す「ソムニウムパート」。人型となったアイボゥが夢世界を移動し、制限時間のある中で「メンタルロック」を解除し、対象者の深層意識のさらに奥底へ沈んでいくことが目的となる。何しろ夢の中なので、リアリティのない現象が障害となって次々に立ちはだかる。突拍子もない選択肢が出てくるが、それが往々にして正解だったりする。
 手がかり発見のために各所を調べて回る――警察ものには必要不可欠な工程だが、プレイヤーにとってはいささか古臭く面倒なパートであることは否めないだろう。しかし本作はこれに、ビデオゲームの特性を大いに活かすSF的ワンダーを満載した。何が起こるかわからなくさせることで、目的達成以上に過程の楽しさを提示しているのだ。何をさせてもアイボゥのリアクションが非常に面白く、また他作品のパロディを多く盛り込むことで飽きさせない作りになっている。

ルートは様々に分岐する

 さて打越作品と言えば、ゲームシステムと密接に絡むシナリオである。本作はソムニウムパートの選択によってルートが分岐していくが、このシステムがどのようにシナリオと関わっているかが終盤で示される。『Ever17』や『極限脱出』と比較すると、その仕掛けの濃度は控えめの印象だった。だがこれは裏を返せば、プレイヤーの考察の負担を少なくしたのだと言える。ラストの怒濤の伏線回収には打越氏の変わらぬ名手ぶりが表れているし、事件の陰惨さをすべて吹き飛ばすような明るいエンディングには度肝を抜かされた。グロテスクな描写が多数ありながらも、過去作と比べてより一般向けの作品に仕上がっているのは驚くべきことだった。

 読む楽しさとインタラクションの醍醐味を合わせ持つ本作は、売上的にはさほどのヒットを飛ばしたわけではない。しかしファン層の厚さを感じたスパイク・チュンソフトは、これを新規IPとして育てようと考えた。2022年に続編の『AI: ソムニウム ファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』、2025年にスピンオフの『伊達鍵は眠らない - From AI:ソムニウムファイル』をリリースし、着実にファンの声に応えている。今後の展開も期待できるだろう。

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