メッセージをウィンドウ内に表示する形式のノベルゲームは、多くのプレイヤーにとって馴染み深いものだろう。
全画面表示ノベルゲームでもメッセージウィンドウは採用されるが、本項ではもっとも一般的な「数行のメッセージを画面下部のウィンドウに表示する形式」について解説する。
この形式は美麗グラフィックや、キャラクターたちの勢いある掛け合いを見せたいという作品と相性が良い。地の文がまったくなく、台詞やモノローグのみで進行する作品もしばしば見られる。
グラフィックがすでに目立っているため、その情景をテキストで細かに描写する必要性は強くないのだ。小説に近い記述ができる全画面表示形式と異なり、ウィンドウ表示形式は省略のテクニックが問われる。
メッセージウィンドウのデザインは簡易的なフィルターのようなものから、周囲に装飾を懲らした華美なものまで様々だ。いずれにせよメッセージウィンドウは作品を引き立てる道具であり主役ではない。全体の雰囲気を損なわないように注意する必要がある。
テキストの色は通常白色系なので、反対にメッセージウィンドウの色は暗色系にすることが多いが、これも作品世界との兼ね合いを考慮したい。『ATRI』は地表の多くが海に沈んだ近未来という舞台設定なので、水色がもっとも適しているというわけだ。
メッセージウィンドウの端にキャラクターの顔を表示して、現在の話者をわかりやすくするのも定番の手法。画面内に複数のキャラクターが表示されている場合に有用だ。ノベルゲームは主人公の一人称視点であることが多いが、その主人公の顔を表示したい場合にも用いられる。
キャラクターの名前はどこに表示するか。
メッセージウィンドウ内に入れ込むか、別途名前ウィンドウを加えるか、そのいずれでもないかの3種類に分けられそうだ。3番目の例は再び『ATRI』で、メッセージウィンドウの上に名前ウィンドウなしにキャラクター名が表示されている(キャラクター名はそもそも表示しないという選択もあるが、これについては別項で論じたい)。
名前ウィンドウを用いる場合、ひとつ気をつけたいことがある。多言語展開する場合、言語によっては文字数がかなり多くなることがある。日本語では枠内に収まっていたのに、他の言語だとはみ出てしまうということがあるのだ。
私も最近自作ゲームにおいて、この問題に直面した。最終的には一定の長さの名前の場合、より横長のウィンドウを表示できるようにプログラムを改修してもらった。多言語展開を考えているなら、このようなことも頭の片隅に入れておこう。
最後に、メッセージ表示は何行までが適切か?
行数が多くなるほどウィンドウのサイズも大きくなる。せっかくこの形式を採用するからには、なるべくグラフィックに被らないようにしたい。
いろいろな作品を見てみると、3行までというケースが多いようだ。2行に収めているケースも少なくない。私の考えでも、4行以上はやはり多いと感じる。
全体的に、ウィンドウ表示形式は全画面表示形式よりも考えなければならないことが多い。それだけ手間がかかるのだが、作品世界にマッチする統率感のあるデザインを作り上げることができた時、その喜びは何にも変えがたいものになるだろう。
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