アライコウのノベルゲーム研究所

ゲームライター・アライコウのノベルゲーム研究に関するブログです。

2024-01-01から1年間の記事一覧

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第22回『メタルスレイダーグローリー』

『メタルスレイダーグローリー』(ハル研究所、FC、1991年) 発売元:ハル研究所初出:1991年 創立は1980年、ゲーム業界では老舗企業であるハル研究所。任天堂社長であった故・岩田聡氏が代表を務め、『星のカービィ』『スマブラ』シリーズを手がけた桜井政…

『たねつみの歌』レビュー:家族愛を歌い上げた2024年を代表する国産ノベルゲーム

『たねつみの歌』(ANIPLEX.EXE、PC、2024年) 大きなネタバレはありませんが、プレイ後に読むことを推奨します。 『たねつみの歌』発売直前! STUDIO・HOMMAGEの『国』シリーズ全作品レビュー 選択肢なしノベルゲームの歴史概観――『たねつみの歌』序論とし…

ノベルゲームの構造と演出 進行構造5「選択肢(少)」

選択肢を少なくしたノベルゲーム、これにもいろいろなパターンが考えられる。 恋愛ものであれば、攻略対象を選ぶだけの選択肢(おおむね3、4人)がひとつだけあり、あとはそのまま分岐することなく個別エンディングまで一直線という例がある。恋愛ものの一番…

ノベルゲームの構造と演出 進行構造4「選択肢(多)」

豊富な選択肢によって千変万化していくストーリー。これがノベルゲームというジャンルの売りのひとつとされている。場合によっては物語の展開どころかキャラクター設定そのものから変えてしまうことも可能だ。 『学校であった怖い話』(バンプレスト、SFC、1…

選択肢なしノベルゲームの歴史概観――『たねつみの歌』序論として

「ノベルゲームだから、おもしろい」 ノベルゲームブランドANIPLEX.EXEが掲げるキャッチコピーである。その自負とともに送り出された作品たちはいずれも高品質で、このジャンルの愛好家たちの期待に応えてきたと言えるだろう。 そして2024年12月、最新作『た…

『浄火の紋章』レビュー:虚淵玄が唯一作った同人ノベルゲーム

『浄火の紋章』(EERGED、PC、2003年) 本記事は2017年8月に公開していたブログ記事の、微調整の上での再掲となる。 シナリオを手がけたのは、今や本邦を代表するクリエイターともなった虚淵玄氏。 キャリアの初期にはこんな作品も作っていたのかと驚かれる…

『あなたの命の価値リメイク』レビュー:フリーのノベルゲームの価値

『あなたの命の価値リメイク』(未来色原石、PC、2019年) 本記事は2019年4月に公開していたブログ記事の、微調整の上での再掲となる。 作者は個人サークル未来色原石の浦田一香氏。当時から現在まで、いじめや児童虐待など一貫して独自のテーマの作品を作り…

『たねつみの歌』発売直前! STUDIO・HOMMAGEの『国』シリーズ全作品レビュー

よくぞこの人を商業の舞台に連れて来てくれた―― その第一報を目にした時に、まず抱いた気持ちがそれだった。 tanetsumi.aniplex-exe.com 『ATRI -My Dear Moments-』『徒花異譚』『ヒラヒラヒヒル』を送り出してきたノベルゲームブランドANIPLEX.EXEが次なる…

ノベルゲームの構造と演出 進行構造3「選択肢(基本について)」

非コマンドのフリーワードによる選択肢は『中山美穂のトキメキハイスクール』などのように1980年代から見られていたが、チュンソフトのサウンドノベルの登場によって一躍スタンダードとなった。現在も圧倒的にこのスタイルが主流になっている。 選択肢分岐と…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第21回『東方見文録』

『東方見文録』(ナツメ、FC、1988年) 発売元:ナツメ初出:1988年 『メダロット』シリーズの開発などで知られるナツメ(現ナツメアタリ)が初期に送り出したコマンド選択型アドベンチャー。システム自体はオーソドックスだが、「サイケデリックゲーム・ニ…

ノベルゲームの構造と演出 進行構造2「コマンド選択」

コマンド入力型に取って代わる形で普及したコマンド選択型のアドベンチャーゲーム。画面に表示されているコマンドを適切な手順で選べば先に進めるというのが一般的な流れだ。 この形式もコマンド入力型ほどではないにせよ、全盛期の1980~90年代と比べればだ…

ノベルゲームの構造と演出 進行構造1「テキスト入力」

「GET LAMP」 ノベル・アドベンチャーゲームはこういった動詞+名詞のコマンド入力型*1から始まった。日本でも『表参道アドベンチャー』を皮切りに、いくつものコマンド入力型アドベンチャーが世に送り出されている。 『宝島』(新紀元社、PC-8801、1983年)…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第20回『えりかとさとるの夢冒険』

『えりかとさとるの夢冒険』(ナムコ、FC、1988年) 発売元:ナムコ初出:1988年 『さんまの名探偵』以来となるナムコ発のアドベンチャーゲーム。開発はのちに『真・女神転生』や『ペルソナ』シリーズで有名になる、当時まだ新興企業だったアトラスが手がけ…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第19回『ドラゴンボール 大魔王復活』

『ドラゴンボール 大魔王復活』(バンダイ、FC、1988年) 発売元:バンダイ初出:1988年 もはや説明不要、日本が世界に誇る少年漫画である『ドラゴンボール』。原作者・鳥山明氏のあまりに早すぎる死去は記憶に新しく、世界中のファンのみならず要人までが偉…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第18回『ファミコン探偵倶楽部』シリーズ

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(任天堂、FDS、1988年) 発売元:任天堂初出:1988年 『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』と『中山美穂のトキメキハイスクール』でアドベンチャーゲームにおいても存在感をアピールした任天堂が次に送り出したのは、少…

ノベルゲームの構造と演出 画面構造7「テキスト非表示」

ノベルゲームの第一要素がテキスト――キャラクターの台詞や地の文の表示であることに異論を挟む人はいないだろう。 しかしそのテキストを作品の中心から外して成り立たせる作り方もある。すなわちグラフィックとボイスを主役にするのだ。90年代の前半から、数…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第17回『中山美穂のトキメキハイスクール』

『中山美穂のトキメキハイスクール』(任天堂、FDS、1987年) 発売元:任天堂初出:1987年 恋愛アドベンチャーゲームの源流を辿るのは難しい。 かつてエニックス(現:スクウェア・エニックス)が発売した『TOKYOナンパストリート』(1985年)のような、軽薄…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第16回『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』

『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』(任天堂、FDS、1987年)※画像はNintendo Switch Online版 発売元:任天堂初出:1987年 マリオ、ドンキーコング、ゼルダ、ポケモン、スマブラ――任天堂が送り出すゲームはアクションやRPGというイメージが今も昔も強いだろ…

ノベルゲームの構造と演出 画面構造6「漫画的表示」

イラストレーションとストーリーの複合的娯楽であるノベルゲームは、漫画とある意味では同じジャンルであり、親和性が高い。 自然と、漫画に近づけてみるという試みも生まれるようになった。まずはメッセージウィンドウの変形だ。 (左)『ロレッタの肖像』…

ノベルゲームの構造と演出 画面構造5「ウィンドウ非表示」

メッセージウィンドウの第一の役割は、テキストを読みやすくすることだ。 逆に言えば、テキストの可読性が十分保たれているならば必ずしもメッセージウィンドウを用いることはない。 『Life is Strange』(スクウェア・エニックス、2015年)※画像はPC版 『Li…

時代を先取りしていた? 対話型アドベンチャーゲーム『Law of the West』再評価論

『Law of the West 西部の掟』。 このタイトルを知っている人は相当なゲームマニアだろう。 1987年3月6日にポニーキャニオンから発売されたファミコン用コマンド選択型アドベンチャーだ。そのオリジナルは1985年にAccoladeから発売されたApple II、Commodore…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第15回『探偵 神宮寺三郎』シリーズ

『探偵 神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件』(データイースト、FDS、1987年) 発売元:データイースト、ワークジャム、マーベラスインタラクティブ、アークシステムワークス初出:1987年 国産の代表的ハードボイルドアドベンチャーゲーム。ひとつがPC発の『J.…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第14回『さんまの名探偵』

『さんまの名探偵』(ナムコ、FC、1987年) 発売元:ナムコ初出:1987年 1987年はファミコンのアドベンチャーゲームが本格的に花開いた年だった。その先陣を切ったのが同年4月2日に発売された、ナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)の『さんま…

ノベルゲームの構造と演出 画面構造4「縦書き表示」

日本語は縦書きが可能であり、かつ日常生活に多用している、世界的に見ても珍しい言語だ。 テキスト主体のジャンルであるノベルゲームでもこれを有効活用した作品が見られる。最初の成功例は1987年にファミコンディスクシステムで発売された『ふぁみこんむか…

ノベルゲームの構造と演出 画面構造3「フレーム表示」

1980年~90年代初期頃のアドベンチャーゲームは、大きく容量を食うグラフィックを画面全体に常時表示することは難しかった。フル表示のグラフィックをシーン毎に頻繁に切り替えるという手法がメジャー化するのは『弟切草』(チュンソフト、SFC、1992年)以降…

ノベルゲームの構造と演出 画面構造2「ウィンドウ表示」

メッセージをウィンドウ内に表示する形式のノベルゲームは、多くのプレイヤーにとって馴染み深いものだろう。 全画面表示ノベルゲームでもメッセージウィンドウは採用されるが、本項ではもっとも一般的な「数行のメッセージを画面下部のウィンドウに表示する…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第13回『ジーザス』

『ジーザス』(エニックス、PC-8801、1987年) 発売元:エニックス初出:1987年 ノベル・アドベンチャーゲーム史のターニングポイントがあるとすれば『ジーザス』はそのひとつに数えられる――そういった論は少なくない。 『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』…

ノベルゲームの構造と演出 画面構造1「全画面表示」

ノベルゲームという語を聞いてまずイメージされるのは、小説の白いページに文字がいっぱいに広がるように、画面全体に文字が表示されるタイプのゲームではないだろうか。 歴史を紐解いてみると、国産アドベンチャーゲームのはしりである『表参道アドベンチャ…

【予告】「ノベルゲームの構造と演出」の連載開始について

Aboutページに記載しているとおり当初はただのノベルゲームファンだった私も、気がつけば自らノベルゲームを制作するようになり、仕事にするようにもなり、今日に至っている。 私がクリエイターを志した頃から比較しても、ノベルゲームを作ろうと考える人は…

国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第12回『J.B.ハロルドの事件簿』シリーズ

『殺人倶楽部(マーダークラブ)』(リバーヒルソフト、PC-9801、1986年) 発売元:リバーヒルソフト、アルティ初出:1986年 長くシリーズが続いた――それはあらゆるエンターテインメントにおいて、名作・良作と判定するのに有力な条件のひとつになるだろう。…