1975~1976年頃にウィリアム・クラウザーが開発した『Adventure(Colossal Cave Adventure)』からアドベンチャーゲームというジャンルが始まった*1ことは、この分野の歴史に関心のあるユーザーや研究者ならご存じのことだと思う。
そう、もうすぐアドベンチャーゲームの50周年が近い。
真っ暗な画面にテキストのみを表示する簡素な作りだったアドベンチャーゲームも、今では豊かな物語、表現、演出、システム、時には驚くようなアイディアを備えるようになり、多くのファンとクリエイターに愛される一大ジャンルを形成するに至った。
そこで来たる50周年を機に、優れた日本産ノベル・アドベンチャーゲームを一定数まとめ、国内外のユーザーと研究者に資するコンテンツを作成すべきではないかと考えた。これは編集者の中津宗一郎氏が取りかかっている、ライトノベルのオールタイム・ベストに着想を得ている。
ライトノベルの「オールタイム・ベスト」を文芸評論家やスコッパー、編集の方々に聞きつつ作成しています。すでに3人の方からいただきました。引き続き300選、500選を目指し、こちらを色々な保全活動の柱としていきますので、よろしくお願いします。https://t.co/zmHtmR6c0n
— 中津宗一郎@名作ラノベ500選を目指します (@nakatsu_s) June 26, 2024
ひとまずは200選を目指しつつ、定期的に候補作を挙げていきたい。
なぜ200かと言えば、もしも一冊の書籍にするなら、1作品2ページ紹介するとして400ページ。過不足のない量になるだろうという考えだ。
本連載でのノベル・アドベンチャーゲームの定義だが、クリックするだけで読み進め、時には選択肢を選び、ルート分岐を経てエンディングを目指す――そうしたテキストアドベンチャー的な作品に限定するつもりはない。バトルパートやシミュレーション要素(プレイヤーキャラの成長要素など)の存在する作品も取り上げるだろう。キャラクターを画面上で移動させて探索させるタイプの作品も、いくつも重要な作品があるはずだ。
明らかにアクションゲームやRPGに分類され、公式もそう発表している作品は除く――くらいに考えていただければと思う。
また商業作品だけでなく、個人制作や小規模の同人ゲームサークルの作品も取り上げる。海外作品ゆえに本連載の対象外だが、冒頭で挙げた『Adventure』がそもそも非商業の個人制作だったのだ。
最後に、18禁作品も選定の対象で、分けることはしない。
例として、先日Nintendo Switchでリマスター版が発売された『Fate/stay night』は、初出は2004年の18禁PC版で、いわゆるエロゲー業界における最大級のヒット作である。テレビアニメ版や劇場アニメ版、スマートフォンゲームの『Fate/Grand Order』のヒットなどによって、今ではそのオリジナル版を知らないユーザーの方が圧倒的大多数だろう。しかし元は18禁作品ということに、オリジナル版発売当時の背景に触れずして、適切な評価はなされないはずだ。
これは個人の企画であるので、連載は完全に私ひとりの判断で進行する。
後に大きな影響を与えた作品。画期的な仕掛けで話題となった作品。長年シリーズが続きファンに愛される作品。ノベル・アドベンチャーゲームというジャンルを超えて有名になった作品――選定基準は複数ある。客観的な選定を心がけたいが、時には私情も入るかもしれないことはご了承いただきたい。
*1:厳密に言えばこれ以前にもアドベンチャーゲームの特徴を備えるビデオゲームは存在している。ただしジャンルの成立という観点から、本連載では慣例に従い『Adventure』を起点にする。