発売元:ハル研究所
初出:1991年
創立は1980年、ゲーム業界では老舗企業であるハル研究所。任天堂社長であった故・岩田聡氏が代表を務め、『星のカービィ』『スマブラ』シリーズを手がけた桜井政博氏が在籍していたことでも有名で、現在までに多くの任天堂ゲームの開発を手がけている。自社ブランドでも多くのゲームを世に送り出してきたが、1991年に発売されたのがSFアドベンチャーゲームの『メタルスレイダーグローリー』だ。
戦闘兵器「メタルスレイダー」が実用化されている近未来。ある日、主人公の日向 忠(ひむかい ただし)の元に一体のメタルスレイダーが届く。それに乗ると「創造主を探せ 地球は危機に瀕している」というメッセージが流れてきた。忠は妹のあずさ、ガールフレンドのエリナとともにメッセージの謎を探る……。
まず何より特筆されるのはファミコンソフトとしては最大容量の8Mbit(1MB)。この大容量により、それまでとはケタ違いに精美なグラフィックが生み出された。
『ファイナルファンタジーⅣ』(スクウェア)が発売されるなど後継機種のスーパーファミコンがいよいよ市場を席巻しようとしていた時期であるが、それらにも決して見劣りしないドットアートの極致とも言うべきクオリティ。アニメーションも非常に高度で、ここまでのことがファミコンで実現できたのかと令和の世から見ても驚愕させられる。ファミコンの限界に挑んだグラフィックのために画面がチラつくこともあるのだが、マニュアルにはこれを調整するための手順も記載されているほどだ。
システムは少し工夫が加えられたコマンド選択型。一本道ではなく多少の分岐があり、場合によってはゲームオーバーにもなる。要所要所で文字入力を求められ、一部にいささか難易度の高い探索がある。とはいえ全体的にはストーリーに集中できるよう最小限のコマンド数になっている。
ゲームの中断はバッテリーバックアップではなくパスワード式だが、メッセージ形式になっているのが特徴。「めかにっくに いってみよう」「つぎは つきだね」という風に、シーン毎にパートナーに呼びかける形で入力する。ストーリーへの没入度を高めるための好ましいアイディアだ。
それまで数多のSFアドベンチャーゲームが生まれていたが、多くはハードな世界観だった。しかし☆よしみる氏(企画 / シナリオ / デザイン /ディレクター)が中心となって作り上げた本作は、その絵柄も相まってチャーミングな要素も。会話がライトな調子なので堅苦しさを感じることなく進められる。
一方メタルスレイダーの謎を巡るプロットは一本筋が通っており、引き締めるべきところではしっかり引き締めている。そして最終盤では宇宙空間でのリアルタイムバトルに突入し、一時も気を抜けない。もちろんここでも迫力のアニメーションが繰り広げられる。これを乗り越えてのエンディングは感動もひとしおだ。
本作は高評価を得たものの、評判を知って興味を持ったプレイヤーたちに行き渡るほどの十分な量は生産されず、ファミコンソフトきってのプレミアが付いていることでも有名になってしまった。2000年にはリメイク版の『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』がスーパーファミコン用ソフトとして発売されているが、こちらも同様にレアになっている。
双方とも以前はWiiまたはWii Uのバーチャルコンソールで配信されていたのだが、現在はサービスが終了している。現行機であるNintendo Switch向けの配信がもっとも期待されているレトロアドベンチャーゲームのひとつと言っていいだろう。
© HAL LABORATORY INC. 1991
© ☆YOSHIMIRU. 1991
© LIVE PLANNING. 1991