発売元:ハドソン
初出:1989年
『No・Ri・Ko』はPCエンジンCD-ROM²でどのようなアドベンチャーゲームを作れるのかをある程度示した。
しかし1988年12月に登場したCD-ROM²は、この月に『No・Ri・Ko』含む3本が発売されたのみで、すぐ後に続くゲームがないことが前々から問題視されていた。そこでハドソン営業部の強い要請により短期間で作られ1989年3月に発売されたのが、漫画家・寺沢武一氏の代表作である『コブラ』を原作とする『コブラ 黒竜王の伝説』だ。
宇宙でも指折りの観光名所となっている宙域サルファ・トライアングル。コブラを乗せた観光宇宙船クイーン・ラブ号も多くの観光客で賑わっていたが、コブラの目的は船内に展示されている宝物だった。やがて目的を果たした彼の前に不気味な物体が迫る……と、原作のエピソードにオリジナル要素を加えたストーリーになっている。
寺沢氏が監修したハイクオリティかつ大量のグラフィック(ただの脇役にも寄り画が豊富に用意されている)。そして随所で再生されるキャラクターボイス。あらゆる面でファミコンとは比較にならないリッチさに当時のゲームファンは驚いただろう。難易度は簡単すぎず難しすぎずという良バランス。基本はコマンド選択型だが、コブラを直接操作して移動するパートもある。テキストもコブラの飄々としたキャラクターを忠実に表現できている。
コブラの声優はテレビアニメ版の野沢那智氏がファンにはもっとも知られているだろうが、このゲーム版では山田康雄氏となっている。これは寺沢氏のたっての要望だったという。
人気漫画やアニメのアドベンチャーゲーム化はそれまでにもしばしば見られたが、本作のように原作者が深く関わるのはきわめて稀と言ってよかった。1991年には寺沢氏が脚本・総監督まで務めた第2弾の『コブラⅡ 伝説の男』が発売され、こちらも好評を博した。
ハドソンはこの後、本作のシステムを元に「デジタルコミック」と称するアドベンチャーゲームを複数開発し、他社も同じジャンル名で追随していった。CD-ROMの大容量を活かしたそれらの作品が、国産アドベンチャーゲームのレベルをひとつ上のステップに引き上げたのは間違いのないところだ。
【参考文献】
岩崎啓眞『ハドソン伝説4・CD-ROMの夜明け』(2022年)
© Konami Digital Entertainment Co., Ltd.