発売元:ハドソン
初出:1990年
近年再アニメ化もされた、漫画家・高橋留美子氏の代表作のひとつ『うる星やつら』。この作品のビデオゲームはPC-8801シリーズやファミコンなどでいくつか発売されていたが、特に大きな評判になることはなかった。
やがて原作漫画、テレビアニメともに終了し数年が経過した頃発売されたのが『うる星やつら STAY WITH YOU』。『コブラ 黒竜王の伝説』で確立されたハドソンのアドベンチャーゲームスタイルに「デジタルコミック」というジャンル名が始めて付けられた作品である。
昨夜からしのぶが行方不明になった。しのぶの行方を追うあたるとラムは、不気味な挑戦状を発見した。捜索を続けるうちに第2、第3の失踪事件が発生する。そして事件は友引町から宇宙にまで広がって……という本作のための完全オリジナルストーリーだ。『コブラ』と同じくそう難しいところはないコマンド選択型で、一部に絵合わせパズルなどもある。ゲームオーバーになる箇所もあるが、すぐにやり直しができる親切設計となっている。
オープニング画面ではおなじみの「ラムのラブソング」が流れる。PCエンジンのゲームでオープニングソングを流したのは『No・Ri・Ko』が最初だが、まだまだ珍しいことだった。そしてキャラクターボイスも完全にアニメと同じ。フルボイスではなく無音のテキストもあるが、それでも十分なボイス量だ。CD-ROMでしか不可能なこれらサウンド演出にファンたちが歓喜したのは言うまでもない。
グラフィックの演出も豪華で、随所で画面全体に表示される一枚絵が用意されている。『コブラ』にもあったが、それ以上の分量なのだ。これもCD-ROMの大容量あってこそである。本家アニメにはさすがに及ばずとも、それに近い感覚を味わってもらいたいという作り手の考えが伝わってくる。
原作のテイストを損なわないストーリーも非常に良好。全4章構成でボリューム十分、かつ中だるみすることなく最初から最後まで片時も飽きさせない。そしてエンディングのドタバタも非常に「らしい」仕上がりで、目の肥えたファンたちも満足だっただろう。
事実、本作は各専門誌でアドベンチャーゲームの枠を超えてPCエンジン全体でも指折りの評価を得た。デジタルコミック最初期の作品にして最高峰と評価しても決して過言ではないはずだ。
© Konami Digital Entertainment Co., Ltd.
© 高橋 / 小学館・キティ・フジテレビ