発売元:カプコン
初出:2010年
ニンテンドーDSのタッチ操作を活用したアドベンチャーゲームは少なからずあるが、『ゴースト トリック』もそのひとつ、それも独創的な良作に数えられるだろう。タイトルは「トリック」と「取り憑く」のダブルミーニングであり、これがまず見事だ。
ある夜、街の片隅で銃弾に倒れた「私」。タマシイとなって目覚めた彼は、命とともにその記憶を失っていることに気づく。自分は何者で、なぜ殺されたのか。そして犯人は? タマシイが消滅する夜明けまであとわずか、たった一晩の追跡劇が幕を開ける……。
死者である主人公はそのままでは自由に移動ができないが、彼のタマシイをタッチペンで引っ張ることで周囲の物体に取り憑かせるというのが操作の基本となる。タマシイ自体の可動範囲は広くないため、主人公は取り憑いた物体を操ることでも移動していく。そして他の死者がいれば会話を行い、彼らの死の運命を変えるために過去に戻るという流れだ。
『アナザーコード 2つの記憶』や『極限脱出 9時間9人9の扉』は時としてDS本体の思わぬ活用法で驚かせたが、本作は引っ張るという操作を突き詰めたゲームデザインとなっている。どのように経路を確保して移動できるか? どのタイミングで物体を操ればいいか? 考えるのが非常に楽しく歯ごたえのあるパズルだ。過去パートはさらに時間制限が設けられ、タッチペンを握る手にも熱がこもるだろう。ストーリーが進むと、同じ形の物体を取り替えるという別のキャラクターによる能力も登場し、難易度をほどよくアップさせてくれる。
シナリオ&ディレクターを務めたのは『逆転裁判』シリーズを生みだした巧舟氏。そのため作風は異なるものの随所にタクシューらしさが見えるのが逆裁ファンには嬉しいところだった。わかりやすさのためにカタカナを多用したテキストに、インパクト第一のキャラクターたち。特にヒロインのリンネは、向かう先々で何度も死んでしまうが元気と愛嬌を失わない、得難いキャラクター性の持ち主だ。
ボクが『逆転裁判』でつちかった雰囲気や、スタイルがあるんですが、あえてそれは『GHOST TRICK』でも変えなかったんですよ。
――「GHOST STAFF 座談会」『ゴースト トリック オフィシャルコンプリートガイド』P117
登場人物たちの死の運命を変えていく達成感が本作の第一の醍醐味だが、それ以上に洗練されたストーリーもさすがの手腕。最大の謎である「主人公は何者か」についても、実は早いうちから伏線が随所に散りばめられている。パズルを解くのに多少の時間はかかるにせよ、シナリオ全体のボリュームは決して多くない。それでも一篇の映画のように練り込まれている。全クリアの後に最初から見直してみるという楽しみもあるのだ。
現在は様々な点が改良された現行機版が発売されている。元々はDSのタッチペン操作前提のゲームデザインではあるが、それぞれの機種に最適化されているので、楽しむのにこれといった問題はないだろう。
【参考文献】
『ゴースト トリック オフィシャルコンプリートガイド』(カプコン、2010年)
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