発売元:カプコン
初出:2011年
ここまでニンテンドーDSならではの機能を活用した、意欲的な作品をラインナップしてきた。そのラストを飾る作品として取り上げたいのが『謎惑館 音の間に間に』だ。決して有名作ではないが、目を見張るオリジナリティがある。
様々な謎や不思議が用意された「謎惑館」。プレイヤーは案内人の導きに従い、各部屋を攻略していく……ストーリーだけを抜き出せばこれだけの内容である。メッセージウィンドウはなく、ボイスだけでシナリオのデモが進行し、それが終わると部屋の探索をすることになる。この探索部分に、あらん限りのアイディアを詰め込んでいるのだ。
まずはマイクによる音声入力。画面に発話アイコンが表示されている時にマイクに向かって言葉を発すると、キャラクターが様々なリアクションを返してくれる。音声入力による進行は『アナザーコード 2つの記憶』などにも部分的に取り入れられていたが、本作ではこれこそがメインとなっている。
たとえば「お前の服を寄越せ」と化け物が何度も迫るシーンがある。衣装名を音声で入力するのだが、同じ単語を入力しても「同じのはいらない」と反応してくれるなど、分岐条件はある程度しっかりしている。他にも迷路で怪物に追いかけられる女性を音声でナビゲートをしなければならないシーンなどは、非常に手に汗握った。
音声は入力するだけでなく、出力――すなわちプレイヤーの聴覚にも訴えかけてくる。本作は「立体音響アドベンチャー」というジャンル名を掲げており、イヤホンやヘッドホンの使用が強く推奨されているのだが、従来のビデオゲームにはないサウンド演出を盛り込んでいる。キャラクターの声が左右に移動する程度は序の口、飛び回る虫が実際に耳に入ってくるようなシーンには思わず背筋が震えてしまった。近年はASMR(Autonomous Sensory Meridian Response、自律感覚絶頂反応)を謳った、主にリラックス・興奮目的の音声作品が流行しているが、より直接的・生理的に作用するサウンド演出という点で、本作の先駆性は評価されていいのではないか。
名付けて「オトフォニクス」を手がけた武井純孝氏はこう語る。
キャラクターは今までのゲームと違って、あたかも実在するかのように自分とつながって関わってきます。それはいつしかゲームの枠を超え、あなた自身のさらなるつながりを作っていくかもしれません。
――『謎惑館 音の間に間に』取扱説明書 P25
また、3DS本体を物理的に動かすことも進行上の重要な要素。これで視点を移動させたり、迫りくる脅威を回避したりする。
携帯型ゲーム機において、ジャイロセンサー*1・加速度センサー*2を用いた作品はそれ以前にも『コロコロカービィ』(任天堂、GBC、2000年)、『まわるメイドインワリオ』(任天堂、GBA、2004年)など、アクションゲームでは存在した。これらはカートリッジ自体にセンサーが搭載されていたが、3DSはゲーム機本体に搭載されている。『謎惑館 音の間に間に』はこの機能を有効活用した初期の作品に数えられるのだ。
そうしたミニゲームの連なりでエンディングまで迎えるが、非常に独特で不思議な読後感?があった。惜しむらくは、音声認識しづらいシーンがちらほらあること。この精度が高ければ、評判はさらに良かっただろう。いずれにせよサウンド演出とフィジカル操作の新たな可能性を提示していた、カプコン渾身のアドベンチャーのひとつであることに疑いはない。
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